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通販新聞読者が選ぶ”2015年通販業界10大ニュース”、ファストリとセブン&アイ提携交渉など巨大企業のEC本格強化に注目



消費増税に翻弄された前年とは打って変わり、「機能性表示食品制度」の開始や中国をはじめとする「越境EC」の隆盛など、新たな販売機会の創出に沸いた2015年の通販業界。市場規模が右肩上がりで成長する中で顧客の利便性向上に向けたサービスも相次いで投入されており、物流関連では「即時配送」が注目のキーワドとなるなど競争環境も一段と激しさを増している。今年1年間に通販業界で起きた主な出来事を読者と共に振り返ってみた。

「2015年の通販業界10大ニュース」は、今年の通販業界で起きた主な出来事やトレンドを本紙編集部が20項目に絞り込み、読者アンケートを受けてランキング化したもの。アンケートは今後の市場動向にとって重要だと思う項目から順番に3つまで受け付けており、合わせてその理由も聞いている。

| 新市場幕開けに歓迎の声集まる
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1位となったのは「機能性表示食品制度が開始」で44ポイント。4月1日に施行された同制度は、「目」「関節」「肌」などこれまでは限られていた身体の部位にまで言及した表示ができるようになったもので、6月から当該商品の販売が順次始まっている。12月上旬までに170商品以上の届け出が受理されており、”睡眠の向上”や”疲労感の軽減”などに言及した新たな表示も次々と生まれている。
通販企業にとっては新制度下で生まれた表現が新たな商品訴求につながり、健食市場全体の底上げにつながるという期待感が広がっている。一方で、機能性表示食品の広告を巡っては未だ自主ルールがなく業界内でもその策定を進める動きが始まったばかり。今後の健食市場拡大に向けて、制度づくりの行方が大きく注目されている。
読者からの主な意見では「停滞していた(当社の)健食カテゴリーの活性化ができるかどうかの瀬戸際だと捉えている」、「今後、受理される案件が増えるに従って市場に出回る商品も増える。消費者がどのように反応するのかこれからが楽しみ」、「今後の商品開発に大きく関わるとともに、法(制度)改正ごとの理解や順応していく必要があると気づかされる」といったものがあった。また、「健食への参入障壁が上がることで逆に化粧品への参入が増えるのでは。化粧品主体の当社への影響も出てくると考えている」、「中途半端な制度の行方に興味」といった見方もあった。

| 中国「独身の日」で大きな成果
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2位は「中国向け市場盛況」が40ポイントでランクイン。11月11日の中国の一大商戦でもある「独身の日」に代表されるように、日本企業にとっては中国のマーケットスケールの大きさに驚愕した1年でもあった。

アリババグループが手がける中国向け仮想モールなどでは当日限定の大型セール企画を行い、1日の総売上高が前年比約6割増となる1兆7000億円以上を記録。出店した企業からも大きな反響が上がっており、ファーストリテイリングは当日のセールにおいて前年比約2倍の6億元以上(115億円以上)という過去最高の売り上げを達成。グッズ販売のトーキョーオタクモードも通常の50倍の売り上げを記録したほか、下着販売を行う白鳩でも昨年の数倍規模となる販売を記録。日用品ジャンルではケンコーコムが1日でほぼ3カ月分の売り上げを超え、ドラッグチェーンのキリン堂は1日で4億5000万円を販売。マツモトキヨシも当初計画より販売を伸ばすなど各社とも盛況だった。

アンケートの回答を見ると「『爆買い』はまだまだ続く」、「日本経済、小売業の活性化に大事な要素。『爆買い』がなくても日本への個人旅行客は増えるので、ホテルや空港受け取りといったサービスも必要」、「今後、事業拡大していかなくてはならない中、非常に重要な市場であると考えている。同時に参入の難しさを感じる」などの意見があった。

また、「中国需要の盛況よりも内需の停滞を危惧している。国内市場が中国人需要に支えられている状況が今期発生したが、その後秋口にかけて中国経済の停滞も伺え、不透明な中国経済動向に国内景気が左右される状況にある。マスコミ報道もこの現象を取り上げることで『爆買い』が流行語になるなど、一種のバブル景気の様相を呈している」といった声も上がっている。

| ネット大手が相次ぎ「即配」
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3位となったのは「広がる即時配送サービス」で30ポイント。ヨドバシカメラが2月に通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」において注文から約6時間で配送するサービス「エクスプレスメール便」をスタートさせたことを皮切りに、大手仮想モールにも即時配送の取り組みが波及している。8月には楽天が注文から最短20分で商品を届ける「楽びん!」を本格的にスタート。スマートフォン専用サービスで「楽天市場」の一部商品のほか、飲料や食料品、日用品などを注文から最短20分、平均1時間で届けるというもの。都内の一部で展開し、24時間注文を受け付けている。また、11月にはアマゾンジャパンも都内の一部で受注から1時間以内に商品を配送する「プライムナウ」を開始した。有料会員向けのサービスながら、日用品などアマゾン直販商品の約1万8000点を対象としている。

現在は各社とも配送エリアや対象商品などが限られているものの、利用状況を見ながら拡大していくことを念頭に置いている。今後、即時配送が主流となることで物流インフラを有する大手仮想モールなどの優位性が高まり、他の通販事業者とのサービス格差がより一層明確になることも予想される。寄せられた回答では「顧客の利便性に対応した配送システムの需要がさらに向上する」、「異業種参入の動向に注目したい」、「『プライムナウ』に注目している。アマゾンは国内の即日配送の礎を築いた実績があり、数年後にはスタンダードなサービスになっている可能性があるだろう」、「当社として追随するつもりはないものの、通販は『送料無料』『即日配送』が当たり前という認識が広がることは当社にとっても影響が大きいと考えている」といった意見があった。また、「現代の様々なECが配送時間の短縮に向けてしのぎを削っているが、再配達問題と同様に行き過ぎた配送時間の短縮は物流業界のひっ迫にもつながりうる。顧客便益と物流業界の安定性の2つを最適化する水準がどうなっていくのかを見守りたい」という懸念の声も上がった。

| 「メール便廃止」に注目
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4位につけた「越境EC参入増加」は、2位の「中国向け市場盛況」とほぼ同義で捉えている企業が多く、ここでも中国の通販マーケットに期待を寄せる回答が多数あがった。「アジア圏の成長率の高さもあるが、国内市場の伸び悩みの表われでもある」、「内需の低迷、外需の取り込みなど今後の中長期的戦略を左右する事象である」などの意見があった。

5位は「ヤマトのメール便廃止」。カタログ発送や小型荷物の配送などで通販企業からの需要も高かったが、”信書リスク”に伴い3月末で廃止となった。しかし、翌月以降にはそれに代わる新サービスとして、法人を対象にカタログやパンフレットなど非信書に限定したDM送付用の「クロネコDM便」や小型荷物向けの新サイズの宅配便「宅急便コンパクト」、ポスト投函型の「ネコポス」などを開始している。「メール便、宅配ともにヤマトと日本郵政に依存せざるを得ない状況。郵政グループ上場によりコスト上昇が不安」といった意見があった。

| TPPの行方に不安も
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6位には通販業界のみならず社会全体でも関心の高い「TPP合意」がランクイン。現在のところ通販業界への影響の範囲が明確になっていない側面もあるが、海外での商品販売や仕入れ、生産体制などに変化が生じることが一部で指摘されている。アンケートでは「パソコン、デジカメ、家電などは国際競争力があるので海外販売の拡大に反比例して国内での商品仕入れが困難になる可能性があり、注視する必要があるだろう」、「当社の取引相手が全国のJA(農協)であることから動向には関心がある」との回答が見られた。

7位の「ベネッセ集団提訴」は、前年に2位だった”問題発覚”から引き続き今回もランクインする形となった。情報漏えいの被害を受けた顧客などが数千人規模で損害賠償を求めているもので、改めて個人情報流出問題の影響の大きさを印象づけた。「業界全体に関わる大きな問題。特に通販の場合は1社の不祥事でも業界全体の印象を損ねてしまう可能性がある」、「会員ビジネスを展開する我々も個人情報を取得しているため、決して対岸の家事ではない」という意見が上がった。

8位は「特商法の改正を検討」で、5年ごとの見直しが定められた「特商法」の規定に基づくもの。通販関連の話題としては「虚偽広告」や「誇大広告」での取消権の導入などが議論されていたが、事業者団体などからの反対意見が強かったため、見送られることになっている。

9位となったのは「Jフロントリテイリング(JFR)と千趣会が資本業務提携」。千趣会がJFRの持ち分法適用関連会社となり、JFRが持つ百貨店などの店舗開発・運営ノウハウと千趣会が持つ商品開発力やカタログおよびネット販売のノウハウを相互活用した商品展開などを進めていくという。9月には相互販売の取り組みの一環として、ベルメゾンで人気の50代向けブランドのポップアップショップを大丸神戸店と松坂屋名古屋店で展開している。「通販(カタログ)、店舗小売、ウェブ販売などのメディアミックスによるオムニチャネル化が日々深耕しており、この提携が象徴するように今後さらに流通業界の再編が加速すると思われる」という声が上がった。

同じく9位となったのは「ニッセンが大型家具撤退」。ベッドやソファーといった大型家具事業からの撤退を発表したもので、配送時の人件費や配送原価の高騰などで赤字が拡大し続けたことが原因だという。また、大手オフィス用品メーカーのプラスが同社の家具・インテリア通販ブランド「暮らしのデザイン」事業を譲り受けることが決まっており、来年5月に事業を開始する計画。アンケートでは「当社も大型家具を扱っている。運送費の高騰と受注効率のバランスが取りにくく悩みも大きい。通販大手のニッセンも同じことに悩み、出した答えが撤退であったことに驚いた」という回答が見られた。

今回、トップ10入りはならなかったが「ファストリとセブン&アイが提携交渉」なども次点につけており、「巨大企業によるEC本格強化に注目している」という声も聞かれている。

[元記事:読者が選ぶ2015年通販業界10大ニュース 機能性表示や中国市場に注目]
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