FASHION

オムニチャネル対応事例にみる、通販事業者が挑む〝店舗〟の狙いは?



通販専業でこれまでビジネスを展開してきた事業者が「実店舗」を構えるケースがこのところ増えてきている。もう1つの販路として育てていきたい、またはアンテナショップ的な位置付け、直接的な顧客との接点作り、新規顧客層の開拓などなど各社とも店舗には様々な狙いや思惑があるようだ。ただし、同じ小売業とは言え、通販と店販は大きく異なるもの。スタート段階では店舗の効果的な運営に必要となるノウハウや知見が十分でないこともあり、一定のリスクを抱えることにもなる。それでもあえて、店舗に挑む思惑とは何なのか。注目すべき通販各社の実店舗運営の狙い、そして現在の状況について見ていく。(5月25日発行の本紙姉妹誌「月刊ネット販売」2016年6月号の特集1で詳細)

インテリア関連各社と共同運営
ディー・エヌ・エー(DeNA)子会社でキュレーションメディアを運営するiemoは5月1日、東京・代官山に「DECOR TOKYO(デコールトーキョー)」をプレオープンした。
内装デザインを手掛ける夏水組など、インテリア関連各社と共同で運営するもので、夏水組が東京都杉並区で運営していた、インテリア関連店舗を移転した形。iemoの村田マリCEOは「O2Oにトライしたいと思っていたので、(夏水組から)声を掛けてもらえてありがたかった」と話す。キュレーションメディア「iemo」のスポンサーからも、「商品を店舗に置いて欲しい」といった声があるという。

店舗は30~40代女性が対象で、マスキングテープやペンキ、輸入壁紙などを揃えた。6月には店舗と連動した通販サイトを夏水組が開設する。店舗にある商品を買えるようにしたもので、開設時には400~500商品を扱う予定。

店舗への導線は、「iemo」からの流入も想定しており、4月29日にデコールトーキョー関連の記事を掲載。今後も店舗で販売する商品の使用方法や製作に至ったメーカーの意図なども含め、背景を深掘りした記事を投入。記事にはクーポンを表示し、レジで見せると販売価格から割り引く。記事から通販サイトへの誘導も行う予定。
店舗では商品の購買データに紐づく属性データが得られることに加え、その商品を紹介した「iemo」でどんなユーザーが読んだのかも分かる。このデータを活用し、プロフィールの似た別ユーザーに宣伝するといったことも行っていく。今後は両者による独自商品開発にもつなげる狙い。

酒・薬の拠点に通販での販売も
家電の通販サイト「EC―JOY」を運営するアイ・アンド・ティーは昨年12月、東京・亀有に実店舗「JOY!STORE」を開設した。1階は食料品や飲料・酒類、医薬品を扱うほか、2階は100円ショップとした。

開設5カ月後の現状について同社の高橋英太社長は「もともとそこまで来客あるとは思っていなかったが、想定より少ない印象だ」と話す。チラシ配布やポスティングなど、PRをあまり行っていない点が大きいとみている。同店は喫茶コーナーも2階に設けており、食事メニューを充実されることでくちコミでの来店者を増やしたい考え。

通販サイトとの連動はまだ行っていないが、同社のアマゾン店や楽天市場店の売れ筋商品を店でも扱うことで、「EC―JOY」を来店者にもアピールしていく。また、同店は医薬品や酒類を扱っているが、医薬品と酒類の販売免許を持つ同店から発送することで、通販サイトでもこれらの商品を扱うことができる。高橋社長は「店の収支をトントンにするには2~3年かかるだろうが、通販サイトでの酒類や医薬品販売は好調に伸びており、そういう意味では成果が出ている」と話す。

駅前大型店の出店を進める
古本や中古CD・ゲームなどの通販サイト「駿河屋」を運営するエーツーは4月9日、東京・秋葉原に「秋葉原店アニメ・ホビー館」と、「秋葉原店ゲーム館」の2店をオープンした。

同社では実店舗として「エーツー」や「ブックマーケット」を展開しているが、駿河屋の店舗としては、「フィギュア・キャラクターグッズ館」を昨年12月、大阪・高槻市に初出店しており、秋葉原の両店舗が2号店となる。「駿河屋」ブランドの店舗を出した理由について、同社では「郊外型の店舗とはコンセプトを変えて、圧倒的な品揃えの『駿河屋』のような店舗を出したいと考えた」(エーツー)とする。7日には静岡駅前に大型店を出店。今後は仙台市や福岡市、さらには東京でも秋葉原、池袋、中野、原宿への出店を想定し、物件を募集している。

秋葉原の店舗については、店舗面積は大きくないが、例えば「ゲーム館」周辺はレトロゲームショップが多いため、こうした商材を充実させるなど、来店者の需要にあわせた品揃えとした。駿河屋では、インターネットで事前に商品の査定依頼を行い、査定結果と商品を店舗に持ち込むと、その場で売却できる新サービス「O2O買取サービスあんしん持込」を受け付けているが、9日のオープン時には、買い取りを求める客による数時間待ちの行列ができた。

銀座出店で訪日外国人対策にも
トランスコスモス子会社で通販サイト「藤巻百貨店」を運営するcaramo(カラモ)は3月31日、東京・銀座に初の常設店を開設した。同日付でオープンした商業ビル「東急プラザ銀座」内に出店。カラモの中村亮社長は「商品を一度手に取って見てから買いたいというニーズが非常に高くなっている」と述べる。そうした傾向を受けて既存顧客の満足度向上や新規客の開拓、さらには海外からの訪日外国人(インバウンド)対策の拠点まで想定して銀座に店を構えた。

キュレーション型の通販サイト「藤巻百貨店」は日本をテーマにしたアイテムを1200商品(約5000SKU)扱っているが、店舗では衣料品やバッグ、調理器具、など通販サイトと同じ商品のほか限定品も取りそろえ、合計350商品(約1500SKU)をラインアップ。商品の選定は「サイズがあるものや人気商品でどうしても実物が見たいというものはなるべく店頭に並べた」(中村社長)という。

専用のアプリを配信し、会員のポイント情報や、購入履歴を通販サイトと実店舗で統合、ネットとリアルをつなぐオムニチャネルにも取り組む。「店舗で買ってもいいし、ネットで買ってもいい。例えば店頭で買って、重ければ持って帰らずに次の日に届くというような購買方法も推奨していきたい」(同)。

今後2店舗目、3店舗目の計画について「それはない」(同)ときっぱり。同社の場合はそもそも少量多品種であるため、多店舗展開に耐えられない。銀座の常設店で顧客満足度を高め、ECと連動した取り組みを進める。中村社長は「店舗でずば抜けて売り上げを取ろうというつもりはない。あくまで軸足はEC。(店舗は)利益トントンくらいで顧客接点の場にしたい」と展望する。

DIYの機会を新客層の拡大へ
工具などのネット販売を行う大都は3月8日に、大阪・浪速の商業施設「なんばパークス」の5階にDIYスクール「DIY FACTORY STUDIY」(店舗面積は85平方メートル)を開設した。仕事帰りのOLや主婦の利用を見込み、DIYを実践する機会を増やして新規客層の拡大につなげる考え。スクールは全国に出店することを視野に入れている。

スクールは女性のDIYの関心が高まっていることを受けて開設。6割近くの女性がDIYに関心を持っているも一方で、実践しているのは14%にとどまると分析。このため、講座は自宅での再現性を重視し、受講者にはテキストやオリジナルレシピを提供。また、講座で使用する道具も電動ドリルやのこぎり、ルーターなどの自宅で用意できるものを揃えた。

講座は「基本コース」と「応用コース」を用意した。「基本コース」は、電動工具の使い方や、塗装や加工のポイントを学ぶ内容。「応用コース」は基本コースの受講者が選択できる仕組みで、エイジング塗装を使ったアレンジや、棚の作成などを用意している。1講座4~5人で行う。受講費用はポイントで支払う仕組み。1ポイントあたり1000~1250円で、講座の内容によって必要なポイントが変わる。

オープンから1カ月時点の受講者は30代女性が3割を占め、次いで40代女性が多かった。体験レッスンでは「スパイスラック」や「タイルの鍋敷き」などの講座が人気で、主婦を中心とした顧客層に合わせてキッチン用品を手作りしたいニーズがあると予想。顧客ニーズに合った講座の開発を進める。

〝ショールーム型〟にも脚光
アメリカで成果を挙げているEC企業発の「ショールームストア」の事例が日本でも広がりつつある。通販サイトへの送客を主目的としていることから接客機能などを重視せず立地にもコストをかけなくて済むため、低リスク・低予算で取り組める店舗として注目されている。日本で先行するアパレルネット販売企業2社の事例を見てみる。

ワイシャツのネット販売を手がけている柳田織物は2014年6月に都内六本木にショールーム型店舗(写真㊤)を開設して以来、年間売上高が前年比30%前後で伸びている。店舗を開設したのは路面店の1階などではなく8階にあるオフィス内の一角で、店内には通販の品ぞろえ6000SKUの中から直近の新商品シャツと、ネクタイ、カフスといった定番小物を置いている。

店内にはノルマを持った専門の接客員などは配置せず、予約制を敷いて見込み客に焦点を当てて事務所スタッフがサイズ確認やコーディネートアドバイスといった商品体験を提供する。「若い人は特にサイズに対して敏感。1枚平均6000円程度のワイシャツなので現物を確認したいという需要は多く、30代のビジネスマンを中心に来客がある」(同社)という。

購入率は来店者総数の7割強で多くは店舗で購入するが、1割以上はネットから購入。また、来店者の3割がリピーターとなってその後も店舗や通販サイトで購入するなど、ショールーム体験を通じてファン化していることが伺えるようだ。

「重要なのは集客とコストのバランス。他の大手ブランドと路面店で対抗するような手段ではないので、極端な話ここの売り上げがゼロでも事務所併設型であれば続けていくことに問題はない」(同)と説明。実際に15年10月以降も全体の売り上げと営業利益がともに同30%前後の実績で推移するなど安定したオペレーションが進んでいる。

オリジナルTシャツの作成・注文ができる通販サイトを運営するスパイスライフは4月5日、オフィス移転に伴いそれまで会議室との兼用で運営していたショールームスペース(写真㊦)を刷新した。渋谷駅の新南口の目の前という立地で、こちらも路面1階ではなく7階にオフィス(277平方メートル)を構え、その内1部屋(約50平方メートル)を来客専用に独立させた形で開放している。

まずは予約制にして、来客の際には日ごろ受注業務などを手がけているサポートスタッフがノートパソコンを使って接客。Tシャツ生地の質感、サイズ感、プリントのりなどが確かめられるよう、全色・全サイズ・全アイテムのサンプル品をすべて展示し、時にはデザインのアドバイスも行って購入の検討材料となる情報を提供していく。

集客はビル前の看板や会員向けのメールが中心で大々的なPRは行っていない。その代わりに米国の先進事例に倣って、顧客が来店体験をSNSで共有して広く拡散されることを期待していることから、「パーク」というコンセプトで室内に櫓(やぐら)を組んだり、今後は床に芝生を植えるなど独自の演出で人目を引くことも検討している。「EC発の取り組みとして顧客がネットに情報をあげてくれるような仕掛けは必要。(リアルの)場所を活かして知られる機会を増やし、ネット上でブランド化される流れが大事」(同社)とした。なお、以前のショールームは1年間で200人以上の来店があったことから、今年度は倍以上にすることを計画。会員数も、15年は前年比1・6倍の16万人となったことから、さらなる伸びを期待している。
[元記事:通販事業者が挑む〝店舗〟の狙いは? オムニ対応で顧客接点作りへ]

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