2014年春夏シーズンも立ち上がり、連日のように続々とオープンしている注目のファッション新ブランドや新業態ショップ。今回、F.M.J.では、2014年春夏デビューを発表しているブランドやショップの新業態を一挙にリストアップ。全33ブランドにもなるそのまとめから、今春のファッション・マーケットの最新潮流を読み解きます。
まず、全体のキーワードとして挙がるのは今季も「ライフスタイル」で、商品構成は別としてもイメージとしての”ライフスタイル感”を打ち出すことはもはや前提条件の一つとなっています。ターゲットとなる人々の「日常」を充実させるための「衣食住」提案を大テーマとして、その括りの中で各ブランドが独自性ある切り口で「コト・スタイル」提案を行い、他社との差別化を図ります。
ターゲット視点でみえるのは、マーケット全体の「高齢化」です。各社が「大人」とうたうターゲットの中心となっているのは、「30代男女」。特にレディス比率が高く、既婚・未婚に関わらず、「カップル」での購買を想定しながら、そこに「ファミリー」として「キッズ」が差し込まれていることがわかります。一方で、顧客と共に歳をとってしまったブランドの「若返り」のために、20代新規顧客を狙うブランドを開発する動きもあります。昨今、周年ブランドが多いこともその裏づけといえるかもしれません。
また、ブランドのコンセプトや特徴を表すキーワードとして、「上質・本質・本物・成熟」な”モノ”や”コト”を、「高感度・ハイセンス」な”ヒト”に提案するという打ち出しが多く、2008年のH&M上陸から続いたファストファッション旋風の”安くてちょっといいモノ”から、”ちょっと高くても本当にいいモノ”を求めるといわれる消費者への、業界の具体的な回答として捉えられます。
流通チャネル視点でいうと、都心と郊外の間の”準都心”とよばれるエリアのいわゆる「SCチャネル」への出店トレンドは継続してありながらも、各社それぞれにとって主要流通ではない、新たなチャネルへ進出することで新マーケットへ挑戦する傾向にあるといえます。
さらに、ブランドやショップの”つくり方”にも変化が出てきています。運営体制を社内スタッフで完結せずに、特定の分野で専門性が高い外部のスペシャリストと契約することで、自社以外の新たな血が注ぎ込まれた新ブランドを開発し、事業ドメインの拡大を図る動きも少なくありません。
以上をふまえると、F.M.J.として提唱する最新潮流のキーワードは、「個店・個客」という考え方です。SPA化による多店舗化が加速する一方で、いかにそこにしかない”個店”づくりに挑み、それに共感する一人ひとりの”個客”を大切に育てていく、という”個”のマーケティングが今後の勝敗を決める重要な視点になっているのでは?と考えます。
現在、中心ターゲットなっている30代は、個性・自分らしさへのこだわりが強い志向にあり、雑誌を教科書にして、セレクトショップ全盛時代の中で育った、ファッションの平均偏差値が高い世代といわれています。その世代のライフステージが変わったことで新たなファッションの受け皿が求められていることが、新潮流の背景となっています。
つまり、上記の”前提条件”となる材料を揃えた上で、独自性ある付加価値の提案によりブランドにどう”味付け”して、そこで”買う理由”を創出できるかが、アパレル各社の成長課題となっていることが今回のまとめでわかります。