電通は23日、日本の総広告費と媒体別・業種別広告費を推定した「2015年(平成27年)日本の広告費」を発表した。
2015年1~12月の日本の総広告費は、景気が足踏み状態の中、6兆1,710億円、前年比100.3%となり、4年連続で前年実績を上回った。マス4媒体は依然厳しいものの、110.2%という2桁成長を遂げたインターネット広告が全体をけん引した。
同社による、調査結果サマリーは以下の通り。
<2015年の広告費の特徴>
1. 2015年の総広告費は、ミラノ万博、企業業績の大幅な伸長、所得増への期待があったものの、前年の消費増税前の駆け込み需要や「ソチオリンピック2014」、「2014FIFAワールドカップ ブラジル大会」開催に伴う反動減、海外経済の景気減速や個人消費の伸び悩みなどが影響し、通年で前年比100.3%となった。
2. 媒体別にみると、「新聞広告費」(前年比93.8%)、「雑誌広告費」(同97.7%)、「ラジオ広告費」(同98.6%)、「テレビメディア広告費」(同98.8%、地上波テレビと衛星メディア関連の合計)を合計した「マスコミ四媒体広告費」は同97.6%となった。「インターネット広告費」(同110.2%)は、スマートフォン・動画・新しいアドテクノロジーを利用した広告が堅調に伸長し、全体をけん引した。「プロモーションメディア広告費」は同99.1%であったものの、屋外広告、POP、展示・映像ほか、は増加した。
3. 業種別(マスコミ四媒体、ただし衛星メディア関連は除く)では、全21業種中6業種で増加した。
・主な増加業種は、「精密機器・事務用品」(前年比109.7%、腕時計、万年筆)、「情報・通信」(同105.1%、オンラインゲーム、オンラインショップ)、「エネルギー・素材・機械」(同104.1%、ガス会社、電力会社)、「食品」(同102.7%、通販系サプリメント、健康食品)、「交通・レジャー」(同102.2%、会員制スポーツクラブ、レジャーランド・テーマパーク)など。
・主な減少業種は、「趣味・スポーツ用品」(前年比84.5%、オーディオソフト、人気キャラクター系玩具)、「自動車・関連品」(同89.0%、軽自動車、セダン、2BOX)、「飲料・嗜好品」(同91.8%、缶コーヒー、第3のビール)、「家電・AV機器」(同91.9%、コーヒーメーカー、空気清浄機、液晶テレビ)、「家庭用品」(同92.7%、機能性マットレス、家具、機能性フライパン・鍋)、「不動産・住宅設備」(同95.0%、一般住宅、賃貸用住宅)など。
画像:業種別広告費(2004年~2015年、衛星メディア関連は除く)
注目は、ファッション・アクセサリー分野の動向だ。経年でみると、2010年からプラス成長を続けた同業種の広告費が、2014年を機に2年連続の減少となった。特に貴金属・アクセサリー、婦人服、機能性肌着などが減少しているという。大手アパレルを中心に、店舗閉鎖やブランド終了による事業整理によって経営再建を図るアパレル企業が後を絶たない。デジタルファーストやオムニチャネル戦略を掲げる企業は多いものの、手段が目的化してしまい、実行施策の是非がみえなくなっているケースも少なくない。単純にデジタル関連の予算を増やすことがゴールではない。広告費の使い方にも、戦略とその予算配分の再考が求められている。
画像:業種別 マスコミ四媒体別広告費(2015年、衛星メディア関連は除く)
なお、電通総研の北原利行氏によるウェブ電通報解説記事でも独自の解説を見ることができる。