「グローバル(国内外事業合計で)でEコマース事業を大幅に拡大していく。現在の売り上げ比率は約5%だが将来的には30~50%までにしたい」。10月8日に都内で開かれた決算発表会の席上、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(=写真)が今後の展望として語ったのはネットでの販路拡大だった。
ネット販売の構成比引き上げに向けた課題として柳井会長兼社長は「仕事の仕方と組織の構造。商売の仕方をその方向に変えていくということだと思う」と説明。すでに米国ユニクロ事業では黒字転換に向けて今期は新規出店数を抑えて、ネット販売の商品構成を抜本的に拡充し売上高を引き上げることを打ち出している。
30~50%の具体的な達成時期については「世の中の動きによるとは思うが10年以内、おそらく最も早ければ3~5年ぐらいでできる可能性もある。非常に短い時間で劇的に変わると思う」(柳井会長兼社長)との見解を示した。
本業である実店舗での販売をビジネスの根幹としている同社が、ネット販売について具体的な数値目標を明言するのは非常に珍しいこと。その背景には売り場にこだわらず自由な買い物体験を求める消費者の行動変化で、業態の際がなくなっている事情が考えられる。
同社では昨年より異業種との提携を通じたオムニチャネルの本格化に着手している。システム面では9月にデジタルサービスの研究や開発などを手がける新会社ウェアレクスを立ち上げて、アクセンチュアと共にチャネルの区別なく商品の選択・購入・受け取りができるサービスの開発を開始。物流面では大和ハウス工業との共同出資で16年をメドに都内に物流センターを開設し、首都圏の一部で通販商品の当日配送などを開始することを計画。そのほかにもセブン&アイ・ホールディングスと業務提携に向けた交渉を始めており、コンビニエンスストアを拠点とした新サービスの展開なども検討中だ。
同社ではこれらの取り組みの成果として「デジタルイノベーション」による新産業を創出することを今後の重点施策の1つとして掲げている。これは企画・生産・物流・販売のすべてのプロセスをネットでつなげて同時進行できるシステムの構築を目指していくというもの。
具体的には企画した商品をバーチャルでサンプル化して確認・修正・生産を同時進行し、最速で最適な数量生産体制を構築。加えて、デジタルコミュニケーションで顧客ニーズにあった独自商品を短期間で開発し、販売チャネルも自由に選べるようにするという。
将来的には顧客が要望する商品を直接工場に発注して、即生産・即発送が出来るような体制も目指すなど、新たな購買体験の仕組みづくりに向けて動いていく。
[元記事:ファーストリテイリング ネット比率引上げ測る、10年以内に30~50%]