今中間期は250億円超の売り上げとなり、前年同期比で30%近く伸長したファーストリテイリングのネット販売事業。しかしながら実店舗も含めた連結業績では計画値を大きく下回り、柳井会長兼社長も「不合格の30点」と酷評するほど国内のユニクロ実店舗などを中心に低迷した。
通期の連結業績でも大幅な下方修正を強いられる中、ネット販売だけが一人気を吐く状況となっている。これを受けて今回の中間決算発表会の席上では、今後の重要戦略の一つとして「Eコマース事業の拡大」という言葉が例年以上に繰り返されるなど、立て直しに向けた切り札として期待する様子が伺えた。
同社が昨年秋に掲げた海外も含めた今後10年間でのネット販売の目標は、売り上げ構成比を現在の5%から6倍となる30%まで高めること。今のところ同社の国別ネット販売比率は、米国が約20%で欧州が約10%となっているが、日本はまだ5%程度で今後は国内でのネット販売化率の底上げが大きなテーマとなってくる。
今期以降、ネット販売強化に向けて取り組みの軸となるのが、リアルとネットが融合した「デジタル化」(オムニチャネル)戦略。これまで企画、生産、マーケティング、販売までリレー式で行っていたプロセスをひとまとめにして、ネットを介して顧客のニーズにあった商品を効率的な物流で即時提供する仕組みを目指すものだ。その一環として4月には有明に大型物流センターを竣工(画像)。実店舗向けの配送業務だけでなく、首都圏を中心にネット販売で顧客への翌日配送・当日配送のサービスエリア拡大も図っていく方針。また今年秋には有明物流センターを基点とした新オムニチャネル戦略「デジタルフラッグシップストア」を開始する予定で、その中心部隊となる「デジタル開発本部」の全メンバーも有明に移転して具体的な業務を始める。今後は札幌、仙台、名古屋、大阪、神戸、中国、欧州など合計10カ所に同様の物流センターを開設する。
また、米国、欧州でも今下期は不採算店舗の見直しを図っていく方針で、大都市部への旗艦店出店で知名度上げてから通販サイトへの集客につなげるという計画も進めるなど、国内外でオムニチャネル戦略を同時進行する考え。
そのほか国内での大きな施策としては、消費増税や原材料・人件費の高騰に伴って昨年まで2年連続で値上げを続けていた価格設定も見直す。「やはり価格、品質、ファッション性、単純なプライスが揃っていないと駄目。今後は買いやすい価格に戻す」(柳井会長兼社長)と説明。これまでの相次ぐ値上げによる客数の低下を認め、今後は「1990円」「2990円」といった形で割安感を演出していた従来のシンプルな価格体系に戻していく見通し。