北欧デザインと言われると、ポップでカラフルなイメージを想像する方も多いが、その中でもノルウェーのデザインと言って思い浮かぶブランド名はそこまで多くはないのが現実かもしれない。奥渋谷に佇む「ノルウェージャンアイコンズ(NORWEGIAN ICONS)」は、ノルウェーのデザインを発信すべく2013年にオープンしたインテリアショップ。母体のカフェ「フグレン」でも使用されているヴィンテージ家具の復刻版と現代のデザイナーのアイテムを合わせて紹介するなど、新しい試みを続けている。ノルウェー王国大使館の改装デザインも手がけた「ノルウェージャンアイコンズ」の福田和貴子さんにノルウェーデザインの魅力について伺った。
Photo: J.L.F.S Text: Madoka Takano Edit: F.M.J.magazine
#01 ノルウェージャンアイコンズについて
ー まず、母体がノルウェースタイルのカフェ「フグレントウキョウ」とのことですが、そもそもオスロのフグレンが東京にできた経緯とは?
1963年に出来たオスロのフグレンを、今のオーナー3人がリブランディングして今のフグレンになっているのですが、それが2008年。その時の目標の一つに「行きたいところにお店を作ろう」というものがあって、3人から挙がったのがホームのオスロと東京とNYでした。たまたま物件を紹介してくれる人がいたこと、そして今の東京の代表のバリスタ小島がオスロで働いていたため任せられる人がいた、といういろんな意味でのタイミングが合ったため、2012年、東京・渋谷でのオープンに至りました。
ー その1年後には「ノルウェージャンアイコンズ」がオープンしていますね。
フグレンが注目を集めた要因として、コーヒーはもちろんですがノルウェーのヴィンテージ家具を集めたノルウェースタイルのインテリアが興味を引いた、ということがありました。デンマークなど他の北欧の国の家具に比べて、ノルウェーデザインのものは色味が濃く直線的で、どこか無骨で男性的な雰囲気を持っています。おばあちゃんの家みたいな懐かしさがある、とも言われたり、みんなの知らない北欧がそこにあったのです。興味を持ってくれている方がいるのならば広めたい、ということで2013年にノルウェーのヴィンテージデザインを紹介する展示会を開催しました。沢山の反響があったことが自信にもつながり、まだ知られていない現状があるということも自覚をしました。その後会社として立ち上がることになります。
2013年に東京・代官山で催された展覧会「NOREWEGIAN ICONS」展のカタログ
ヴィンテージのストレスレス®チェアも紹介されている
ー 会社としての主な業務はどういったことなのでしょうか。
ノルウェー家具や生活雑貨の輸入代理業務になります。その当時たまたま国内でも当時のデザインの再解釈が興っている時期で、椅子や照明のメーカーなどが同時多発的に復刻版を作り始めていました。それらを紹介できるタイミングだったということもあり、ヴィンテージと現行品の両方を扱う輸入代理店業が始まりました。ヴィンテージ家具はどうしても価格が高く、数に限りもあるので、現代のライフスタイルに合った現行品が今はメインとなっています。また、後々には若手のデザイナーのものを紹介していきたい、というところまで含んで、「ノルウェーデザインのアイコンとなるようなデザイナーを国外に紹介していく」というのが企業理念になっています。
ー では、ノルウェーデザインならではの特徴はどのようなところにあるのでしょうか。
ノルウェーデザインの家具は、デンマークなどと比べると、繊細な、可愛らしい要素というよりは、どちらかというと直線的だったり、足が太かったりしていたり、色も少し濃いめだったり、構造が骨太なイメージがあります。個人的には男性的なデザインと言えるのではないかなと思っています。
ー 家具はライフスタイルに依るところが大きいかと思いますが、ノルウェーの方々が家具やインテリアに対してどのような価値観を持っていますか?
ノルウェーは、一番大陸から遠く、山に囲まれた地形で自然が険しい環境にあります。なので、大陸に近いデンマークが持っているようなエレガントさや都会っぽさというよりは、実用性やあたたかみ、壊れにくさを重要視しているような気がします。ノルウェー人の人柄も、アウトドアのイメージが強く、スポーツウェアが日常着だったり、素朴なイメージがあるのですが、それもノルウェーの自然と共に暮らすライフスタイルを反映しているからかなと思います。
ただ、油田開発が興った1975年くらいを境に、自国でのデザインや製造が下火になってしまいました。オイルマネーに湧いて一気に国が豊かになったことで、自国で生産するよりも他国のものを取り入れる方向に動き始めてしまったためです。そしてまた最近2010年頃から、国としても自国のデザインを見直す動きが出てきたこともあり、少人数で復刻版の生産をはじめるメーカーや新しいデザイナーなども増えてきています。
ー 内装デザイン業務なども行っているようですが、今後の展望は?
私がもともと内装設計と建築を学んでいて、ノルウェーに留学していた経緯があって、ノルウェー王国大使館のエントランスの改装デザインなども手がけさせていただいたり、先日オープンしたフグレン浅草や系列の会社の内装デザインも行っています。
今後の展望としては、現在は対B to Bでの取り組みが主になっているので、今後はB to Cへ広げていきたいという想いがあります。コンテンツを作り自社webサイトやSNSで配信したり、また当初土日のみ開いていた店舗を火曜・水曜のみの休みに変更しているのですが、この場所を知ってもらうような取り組みも行っていきたいと考えています。
#02 ノルウェースタイルの家具&テーブルウェア
ー では最後に、お店のおすすめや人気のアイテムをご紹介いただきます。
01. 「ヘイマット」のデザインマット
一番売れているのが「ヘイマット(HEYMAT)」のデザインマットになります。ノルウェーでは家の外と中の仕切り、靴を脱いで置く玄関マットとして使用されるものなのですが、 日本では靴を脱いだ後の玄関マットとして、またキッチンマットやベッドの足元などにおすすめしています。素材はポリエステルのペットボトルの100%リサイクル素材で、ウールなどの天然素材ではないので丸洗いしても縮むことはなく、裏はゴムなので水を通さないので梅雨時期に濡れたものを置いておくのにも重宝します。
02. 「フィッギオ」の食器
次に、陶磁器メーカー「フィッギオ(FIGGJO)」の食器です。1941年に創業された老舗で、当初はミッドセンチュリーのレトロな雰囲気の食器を作っていましたが、1980年頃からホテルやレストランなどのプロユース向けの業務用食器として輸出を展開し始めます。
現在では、著名なレストランやシェフたちに支持されており、現代の一般家庭へ向けたホームコレクションを再び発表しました。オーブンにも入れられる強い素材で、デザインの特徴としては、色付けのモチーフが自然界にあるものをインスピレーション源としていること。例えばサーモンや干し草を集めたものの断面、石の断面だったりと、モチーフが自然のものなので一見グラフィックが強く見えるものも、物を乗せたときに自然に違和感なく使えます。
03. 「ドッカ」のペンダントランプ
B to Bで多いのは照明です。「ドッカ(Dokka)」は1954年にデザインされたヴィンテージを今の時代に合わせて復刻したものになります。当時のカラーは白や黒、赤、真鍮など光沢感のあるものが多かったのですが、現行版は今の時代に合わせてマットなグレーがかった色味で作られています。天井のあまり高くない、日本の家で使ったときにも違和感なく使えるようなコンパクトなサイズ感も魅力です。
ー 異国に来たようなかわいらしい建物の中に一歩入ると、どこか懐かしくほっとする空間がそこにはありました。北欧らしく洗練されつつも私たちの生活にすんなりと馴染んでくれるノルウェーデザインは、一度手にすればきっとその魅力の虜になってしまうはずです。
STORE INFORMATION.
NORWEGIAN ICONS
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-16-8
営業時間:11:00〜19:00
定休日:火・水曜
TEL:03-5738-7671
※不定休などのインフォメーション、その他アップデート情報はオフィシャルサイト、フェイスブックページにて要確認
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