市場調査機関のパイオニアとして知られる矢野経済研究所は、「国内アパレル市場に関する調査結果 2013」を発表。これは、2013年7月~9月の期間行われた、アパレルメーカーや小売業(百貨店、量販店、専門店など)への独自調査によるもので、同社が「アパレル産業白書 2013」としてマーケットレポートを発行。国内アパレル総小売市場動向と予測をはじめ、アパレル関連企業の総売上高ランキングやメーカー、アイテム、ブランド、チャネル別など各市場動向をみることができます。
今回の調査結果サマリーは以下の通り。
| 2012年の国内アパレル総小売市場規模は前年比101.3%の9兆1,645億円、2011年に引き続き前年比プラスで推移
2012年の国内アパレル総小売市場規模は前年比101.3%の9兆1,645億円であった。品目別では、婦人服・洋品市場が前年比101.1%の5兆7,500億円、紳士服・洋品市場が同102.0%の2兆5,185億円、ベビー・子供服・洋品市場が同100.1%の8,960億円であった。いずれの品目においても前年を上回り、堅調に推移した。
| ミセス向けブランドやキャリア女性向けブランドなど百貨店ブランドが好調
2012年は大手アパレル事業者における百貨店ブランド(百貨店を中心に展開している大手アパレルメーカーの主要ブランド)が好調で、特に婦人服のミセス向けブランドやキャリア女性向けブランドにこうした傾向がみられた。こうした婦人服の好調さが百貨店チャネルを牽引し、ここのところ低迷していた百貨店チャネルにも底打ち感がみられた。
| ターゲット層を絞り込んだ特化型ブランドなど、今後はブランド戦略が重要に
ファストファッションブームが一段落する一方、品質重視の消費者層が主流になってきた。高品質の商品や機能性商品、また細部にこだわりのある商品などを提供するブランドが好調である。今後の成長のためにはターゲット層を絞り込み、同層のニーズを確実に取り込むブランド戦略が重要である。
サマリーにもあるように同社によると、低価格衣料を展開する大手SPA企業やファストファッション等により近年影響を受けていた百貨店ブランドですが、2012年の好調の背景には、
・クールビズやウォームビズなどに関連した機能性商品やミセス向け衣料の好調
・価格よりも高品質な商品に価値を見出す消費者が増えたこと
・インターネットや各種メディア、店頭イベントでの積極的な情報発信など、消費者に向けた販促活動の実施
などが主な要因としてあるといいます。
また、好調ブランドにみられる傾向として、素材や縫製、デザインからポケットの位置や数、飾りなど細部にこだわることで、価格帯は中価格帯以上であるが、品質に見合う商品を展開するような、付加価値高い特化型ブランドであることを指摘。ターゲットを絞り込むことで、ニーズを確実に取り込む、巧妙なブランド戦略が重要になると分析しています。
さらに今後は、そのような消費者の品質重視の傾向から中高価格帯商品の購買も継続するとみるいっぽうで、少子化、高齢化の進展もあり、衣料品全般に大きな成長は見込めないとして、2015年の国内アパレル総小売市場規模は9兆970億円と2012年比で99.3%のほぼ横ばいと予測。この数字は経年でみると、リーマンショック前の2007年に比べ、88.4%と2ケタ減のマイナスとなります。
つい先週、F.M.J.で掲載しランキングトップ記事となった[宝島社がトップシェア「日本ABC協会 2013年上半期雑誌販売部数」にみる、ファッションのシビアな現実]でも触れていますが、このような市場全体のマイナス動向を眺望しておわるのではなく、次世代ファッションマーケット成長に向けて、”次の一手”を業界一丸となって仕掛けるべき時がきていると捉えています。
F.M.J.は創刊から5ヶ月となりましたが、当初のコンセプトの通り、今後もキュレーションメディアの立場から、そのような企業やメディアの情報を優先的に紹介させて頂きつつ、プロジェクト”F.M.J.”としての新たな取り組みも積極的に仕掛けていきたいと考えています。
・矢野経済研究所「2013 アパレル産業白書」 http://www.yano.co.jp/market_reports/C55116100