ここ最近、ファーストリテイリング、クロスカンパニーという国内大手アパレルから、ディーゼルジャパンなどの外資ブランドに至るまでファッション業界に、「販売員の正社員雇用化」の波が起きはじめています。これまで、販売職の中途採用ではアルバイト・契約社員としての採用が主流でしたが、今回の数社の取り組みには以下、大きく2つの目的・背景が含まれると考えます。
1) 採用競争力の強化
昨今、”若者のファッション離れ”が言われて久しいですが、これは採用や雇用においても影響が出ているといえます。一昔前は、好きなブランドで働けていること、そのブランドの洋服を着ていることがロイヤリティであり、働く上でのモチベーションであったため、企業側が多少条件が悪くても採用時の母集団形成が容易に出来たり、長期的に人材の囲い込みが出来ていました。
しかし、最近では必ずしも”好きなブランドで働く”ことが最優先ではなくなり、「好きなブランド=働くブランド」ではなく、条件面や長期的なキャリアの見通しがたつブランドが”働くブランド”として選ばれる傾向が強くなったため、優秀な人材を効率的かつ迅速に確保するための手段として、雇用形態の見直しは有効といえるでしょう。
2) キャリアの長期形成
SPA化による同質化が加速している日本のファッションマーケットにおいて、競合他社に勝ち、生き残っていくための施策として「販売職のスキルアップ」に着手し、接客サービスの差別化を図ることは重要課題の1つです。しかし、これまでは自立した販売員となり、顧客を抱えるようになるまでに育っても雇用・給与条件に不満を感じ、他ブランドに転職したり、教育途中で育つ前に退職するというケースも。それでは採用・育成に投資した金銭的、時間的な”コスト”が無駄になってしまいますし、人が短期的なスパンで代わるブランドが、競争が激しいファッションマーケットの中で、長期的な成長を成し得ることは難しいといえます。現場のスタッフをブランドの財産と捉え、彼らが長期的にキャリアを形成していける環境を整えることは、日本のファッション業界の成長に大きく起因すると考えます。
F.M.J.では、”人財”という視点においても次世代ファッション業界の未来や各企業の成長戦略を考える上で切り離せない重点課題として捉えており、今後も特集していきたいと考えています。