FEATURE

Vol.1 島崎賢史郎/N magazine 編集長 [前編] 



水原希子を表紙に迎え話題を呼んだ、新雑誌『N magazine』。その発行人である次世代の編集者 島崎賢史郎からみた、いまのファッション・クリエイティブシーンとは?

Photo:丸井”motty”元子(RALPH)

メディアのデジタル化やファッションのライフスタイル化の流れがある中で、
あえて”ファッション+雑誌”というカタチにこだわって、勝負した新雑誌『N magazine』。
しかも、現役大学生が一人でそれをやったというサプライズと、業界へのアンチテーゼがそこにはあった。
そんな彼を放っておくわけにはいかず、『Numero TOKYO』や『MEN’S NON-NO』など多数のメディアがインタビューを掲載。いま最も注目を浴びる、次世代の編集者の熱き想いに迫った。

-まず、創刊一冊目となる0号が話題になりましたが、率直ないまの感想を教えてください
島崎:周りで「すごい!すごい!」とネット上で騒がれている時期もありましたが、こちらとしては冷静で、「大学生が出しました。バイト代が資金です。表紙は水原希子さんです。一流クリエイターが関わっています。」というところで「どんな雑誌だろう?」と火が付いたと思うんです。肝心な中身は誰も触れていなくて、実際中身は自分自身も出来上がった瞬間はとてつもなく嬉しいのですが、編集部分で反省点がたくさんあります。だからこそ次も作りたいと思うし、とにかく続けていくしかないと、求めるものを求め続けて。次の号が勝負ですね。

―業界の方々からの直接の反響はどうでしたか?
島崎:賛否両論をたくさん頂きました(苦笑)。ただ、出版社の編集者の方々が、「気づかせてもらった。」とおっしゃって頂けるのはとても嬉しいです。「最近、適当にやってたわ。」とか「昔は熱い気持ちがあった。3、4年仕事していると、面白いことしようという気持ちはどんどん無くなっていった。」と。行動で示した部分では、編集者に波紋を起こせたかなと思いました。学生の素人目からですが、今の業界は、内容というより電子書籍だのアプリだので、内容を求める人が少なくなってしまっていると思うんです。私より頭がキレて、経験があり、素晴らしい環境にいる編集者の方々がやる気になったら、もっともっと楽しくなると思います。

―発行部数は初版5000部+重版2000部とのことですが、販売状況はいかがでしょうか?
島崎:はい。おかげさまで5000部は完売し、重版の方が今 8割以上ははけているので、ほぼ完売といっていいと思います。
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―すごいですね。とはいえ、まだまだ雑誌や島崎さんのことを知らない方や真意が伝わってない点もたくさんあると思います。まず、『N magazine』について教えてください
島崎:コンセプトは、「N」を頭において、「Nippon」日本から発信する「日本発信」、「Neutral」の「上下関係なし、フラットな関係でやりたい」、そして最後に「Namaiki」で「生意気な心意気で立ち向かう」という3つの意味を込め、『N magazine』という名前にしました。一緒にオモシロいコトしましょう!って何か作品を生み出すことに力を注いでいる人たちと一緒にやっていきたいなっていうのがコンセプトです。とにかく自分自身がワクワクドキドキしたいんですね(笑)

―この雑誌を出そうと思ったきっかけっていうのは何だったんですか?
島崎:きっかけ・・・、これ、結構いろいろ聞かれるのですが、あんまり無くて(笑)まぁ、本当に雑誌はあんまりもともと読んではいなくて、『ADD magazine』時代に知り合ったクリエイターさんに教えていただき、古本屋さんで海外の雑誌や、昔の『流行通信』『STUDIO VOICE』『HUgE』『high fashiion』などの雑誌を見て、「今の雑誌と全然違うじゃん!」と思いました。ブランド側も積極的に応援しているというか、一緒にクリエイションを作っていく熱がすごくあって。それが今の雑誌にはあまり無いのかなって。例えば、360°カタログなど、紙よりもWEBでできることが断然増えている中で、今は紙媒体でさえカタログ的な感じで載せているっていう。「これってはたして今の時代に必要なんですか?」と考えたときに、自分は作品としての雑誌を作りたいと思ったんです。

―水原希子さんを表紙にしたことも話題になった要因のひとつですが、起用した経緯は?
島崎:水原希子さんは、絶対表紙にしたかったですね。カジュアルだけでなく、ハイファッションでも活躍していて、なおかつ自分で海外の事務所を渡り歩くっていうそのポテンシャルとか、その時点で「この人クリエイションが好きなんだな。こういう人と仕事したいな」っていうのがありました。なおかつ一般層からの人気もあって、この人でしか0号の表紙は無理だなと考えていました。だから、0号は水原希子さんがダメだったらこの雑誌作ってないと思います。

―キャスティングだけでなく、クリエイターのブッキングもかなり苦労したと思いますが?
島崎:「こういう企画やりたいから、お願いさせてください」と最初は電話してお願いして、その後直接会いに行きました。かなり断られましたね。学生で信用もないですし、「え?本当にやるの?」みたいな感じでした。ただ、分かってくれる人は絶対にいるんです。そこまで行き着くか、行き着かないかで、その先が決まってくると思います。自分自身がきっかけとなる方に会えて、本当に幸せ者です。

―雑誌としてのファッション提案は?
島崎:私は、ファッションもクリエイションに関しても、とてつもなく詳しい訳ではありません。前提となっているのは、クリエイションをする際に何かを表現する時に一番合った服が必要。なので、自分としてはこれをファッション誌というよりは、カルチャーよりのクリエイションの雑誌だと思っています。つまり、一枚として、ストーリー作品の写真としてのクリエイションを発信していきたいって思っています。ただ、これからもっとファッションを理解して取り上げていけるように勉強の連続です。

―今世の中的にWEBの流れがあるなかで、紙媒体にこだわったっていう意図と雑誌の魅力は?
島崎:「雑誌はモノである」ということです。つまり、パッケージとしての価値、モノとしての価値っていうところに尽きると思います。本屋さんに行き、現場で偶然出会うこともモノとしての価値のひとつです。しかし、情報量、編集者が素晴らしければ文章のクオリティ、ページの上限もない内容の深さ、そういった面ではWEBには勝てないと思っています。この前面白い研究の本を読んだのですが、0歳のときにi padを渡されて、3歳のときに初めて絵本を渡されたら絵本の表紙をフリックしたらしいんです。もうこうなってしまったら終わりだなと。

―それでも、雑誌にこだわったのは?
島崎:そこで、一番重要になってくるのが、やっぱりi padには形の限界もプログラムの限界もありますし、まだ紙に生きた人間だからこそこんな触り方だとかめくる楽しさがあります。アナログだからこそいいものがあると常に考えていて、その面白さとか、価値っていうのを伝えていきたいなって思ってます。

―出版業界にとっては力強いお言葉ですね(笑)
島崎:最後の悪あがきですよね。最後の。もう分かってるんですけど、それを諦めてしまったら、もう終わりなんじゃないかと。もう出版の人たちは諦めかけているじゃないですか?
しかも雑誌に、紙としてあるものをそのまま電子書籍化してしまう。「それじゃあ皆i padにするでしょ」と。特に今の雑誌は、モノとしての価値というより情報で勝負しようとしていると思うので。ただ、雑誌ってカリスマ編集者の力で成り立って、その編集者が選んだからこれを買うとか、情報やモノの目利きとしての価値があると思います。それがWEBや電子に移行しているからヤバいんです。

―後編につづく
Vol.1 島崎賢史郎/N magazine 編集長 [後編]
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島崎賢史郎 Kenshiro Shimazaki
1991年東京都出身。明治大学政経学部政治学科4年。
学生団体にてファッションフリーペーパー『ADD magazine』の企画編集、『WWD JAPAN』『FASHION NEWS』(INFASパブリケーションズ刊)のインターンを経て、2012年12月『N magazine』を創刊。
趣味は空手(三段)とトロンボーン。
http://nmagazine-tokyo.com/

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