FEATURE

軍地彩弓ファッション・ディレクターに訊く、テクノロジーが切り開くファッションの未来<後編>



<PROFILE>
軍地彩弓 SAYUMI GUNJI
大学卒業後、講談社「ViVi」のファッションライターとして従事。セレブブームや109ファッションなど数々の流行を生み出す。「ViVi」の姉妹誌として「GLAMOROUS」を立ち上げ、ファッション・ディレクターとして携わる。日本市場に初めてアラウンド30、エイジレスというコンセプトを取り入れ大きな話題に。コンデナスト・ジャパン「GQ JAPAN」の編集長代理、「VOGUE girl」クリエイティブ・ディレクターを経て、現在は扶桑社「ヌメロ・トウキョウ」エディトリアル・ディレクターとして活躍。2014年、自身の会社、株式会社gumi-gumiを設立。
瀬戸恵介 KEISUKE SETO
2010年10月グルーポン・ジャパン株式会社、2013年8月ザ・リアルリアル株式会社のそれぞれ代表取締役を経て、2014年5月よりターミナル株式会社、代表取締役就任。
-TERMINAL ORDERで広がるファッションの可能性
瀬戸:今回の対談企画をご依頼したときに、弊社の展示会受発注システムTERMINAL ORDERのご紹介し、軍地さんには賛同いただきましたよね。このプラットフォームですが、5年ぐらい前から海外事例などを調査しはじめ、昨年から日本でスタートしました。おかげさまでこの一年間で100ブランドほどの導入事例があります。

軍地:海外にこういうシステムがあることは知っていたので、話を聞いた時にいいなと思いました。私は、ハイブランドからインディペンデントまで一回のシーズンで100ブランド近く回るんですが、だいたい受注システムがアナログなんです。業務的なところの効率化というのももちろん素晴らしいのですが、なによりブランドとバイヤーがスムーズに繋がるというファッションの可能性に大きな意味があると思っています。ファッション業界はブランドとバイヤーを繋ぐ仕組みが少なく、人を通じて繋がるコネ社会になってしまっていたんです。だから、オープンに繋がりあえるシステムが欲しいなと思っていました。さらに、日本のバイヤーだけでなく海外のバイヤーを繋げる事でマーケットがぐっと広がりますよね。

瀬戸:軍地さんが言われるように、ファッションの閉鎖的なところを打破したいと思っています。もっとライトに、「ここに登録しておくといい情報が入手できるよね」みたいな感じにしたいなと。もちろん海外のバイヤーさんにも活用して欲しいと思っています。ここではバイヤーさんからお金を取りませんし、クライアントさんからもある程度いただくだけ。初期費用にこれまでみたいに何百万とかかからなくてもいいものを作れる時代なんですよね。今は100ブランドで1500~2000バイヤーぐらいですが、これが10倍になるとファッション業界にも何か大きな発展があるのではないかと思っています。
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軍地:展示会を回ることはバイヤーにとってかなり体力勝負の仕事です。アイテムをセレクトして、オーダーをして、写真を整理するなど、膨大な作業で、本当にド根性の世界なんです。そうやって自分たちが厳選したものだからこそ、セレクトショップの展示会に行くと、バイヤーさんたちが嬉々として紹介してくれるんですよ。その姿を見ていると、出会いって本当に大切だなと思います。そして、メーカーの方も、どのセレクトショップに卸すかというのは自分たちのブランディングに関わってくるので慎重になるところ。その考える時間を作るためにも、アナログ作業の時間を減らしてあげたい。それが商品コストにものってくると思うんですよね。また、私たち編集者やスタイリストはお洋服をリースするとき、未だに伝票の山と格闘しているんです。バーコード管理のところもあるのですが、やっぱりまだ手書きも多く、書き間違えがあったり、参考商品を出しちゃったり・・・ どうしても情報伝達が遅くなってしまう。「システムがここまで成長しているのにどうして?」と思うこともありますね(笑)。

瀬戸:クリエイティブなお仕事をされている方々の作業のうち、機械で出来ることは機械でやればいいんです。バイヤーとブランドがディスカッションできる時間提供と内容のクオリティを維持する手助けが出来らと思っています。まだまだですけど、ブランドさんにご理解をいただいて導入していただいているのもそういう思いが伝わってきているのかなと。もちろん、いくらITが進んでもクリエイティブなところまでは手出しできませんが。

軍地:ファッション×テクノロジーの進展により、雑務などの仕事がなくなると思うんです。でも、瀬戸さんが言うようにクリエイティブなところはなくならない。雑務の時間をそこに費やすことが出来るから、ITの進化によってたくさんの人にチャンスがでてくるんですよ。

瀬戸:雑務に追われる日々だと、モチベーションも下がってきますよね。ファッションが好きで夢を持って働いているのに、実務でつぶされてしまうのは悲しいですよね。今は既存のブランドさんに取り入れてもらっているのですが、これからはスタートアップのブランドさんやブランドを立ち上げようとしている学生さんとかにも利用してもらえたらいいなと思っています。

軍地:低消費の今、個人の力が消費者でも物作りの立場でも際立つようになってきている。そういう構造になってきたときに個人と個人を繋ぐのは、やっぱりシステムだと思うんです。SNSもその一つ。SNSでスタートアップしていくのも必然だと思っています。ITの発展とともに個人の力がより強くなり、チャンスが均等に与えられる時代ですよね。

瀬戸:そこにターミナルのテクノロジーが貢献出来れば・・・ 勝手にですが、ファッション×テクノロジーを担うつもりで頑張ります!
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文責:吉岡 美奈

[元記事:テクノロジーが切り開くファッションの未来#1 【ファッション・ディレクター軍地彩弓氏】後編]
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