パリの総合美容専門店「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」が、日本における7店舗目、路面店としては2店舗目となる青山骨董通り店を8月28日にオープンした。
まるで街並みを引き込んだような同ブティックは、地域に溶け込み、親しまれる存在になることを大事にしてきた同ブランドの理念を体現するものとし、新たに誕生する。
ブティックが位置するのは、東京・南青山にある1982年に建てられた煉瓦造りのビルの一角。同ブランドのオーナー兼アーティスティックディレクターのラムダン・トゥアミ氏は、この場所を見つけた際、彼が育ったフランス南西部の街モントーバンで、古くから見られる赤煉瓦造りの建物を思い起こさせるものとし、心を弾ませたという。一方で、青山という街は、彼が初めて東京にやってきた1990年代から東京を訪れる度にそぞろ歩きをする中、新たな発見に出合ってきたプレイグラウンドであり、過去への郷愁を誘い、今の自分を刺激する、そんな青山に店舗を持つことは彼にとって夢であった。そして彼がこの街でワクワクしてきたように、訪れる人の胸が高鳴るお店を作りたい、そんな思いから同ブティックが誕生した。
築40年のビルは外壁だけでなく、街路まで煉瓦タイルが敷き詰められているところが特徴であり、フランスと青山をつなぐ共通項である煉瓦は恰好の要素となっている。この特徴をそのまま店舗の内装にも生かし、街並みにカモフラージュしたように店内にも煉瓦を引き込むことで、道行く人が誘い込まれるような空間を目指した。また、煉瓦によって外と内とがつながっているように見えることは、40平方メートルという空間の制約を感じさせない視覚効果ももたらしている。加えて、古代の浴場を連想させる煉瓦は同ブランドの商品を置く空間に実にしっくりくるのも魅力だ。
周囲の環境に溶け込むために、店の表には同ブランドの名前を表示するものは無い。その代わりに、店の外に突き出たショップサインとして、ベストセラーアイテムである「ポマード・コンクレット」の巨大なサンプルが同ブランド、同ブティックを語る。一方で内装には、同ブランドの根幹をなす伝統とモダニティが手を取り合うこと、手仕事とテクノロジーへの賛歌、そしてユーモアといった要素が随所に散りばめられている。
店内中に入ると、奥に長く、床から壁まで煉瓦で包まれた空間が広がる。店ではなく、ビルの奥へと続く通路なのかと、不思議な感覚を引き起こすそんな長い“通路”に沿って、日本製の理化学研究用のガラス管が、訪れる人の視線を奪うように、縦横無尽にディスプレイされている。ピンボールゲームのように複雑に組み合わさったガラス管は、訪れる人自らが同ブランドのユイル・アンティークを試すことが出来る、遊び心あふれるインスタレーションとなっている。装飾性など一切不要で、実験室において何よりも機能性が求められる道具でありながらも、その造形美は日本のガラス職人の化学的知識と手仕事が結実したものであり、同ブランドが舌を巻いた現代日本のものづくりとして表現されている。
このガラスのディスプレイと向き合うのが、クラシックを踏襲したビューティーカウンターを配した空間だ。店の外からは見えない、カウンター越しの奥まった空間を見つけると、まるで高揚感に包まれるかのような感覚に陥るのが魅力だ。フランスの家具職人が作った壁面から天井にわたるウォールナット材のウッドパネルには、真紅のベルベット生地とギリシア神話の中の水浴のシーンを連想させる石膏リリーフが張り込まれ、18世紀フランスを彷彿させる世界観を作り上げている。祝祭性に満ちた内装に浸る中、恍惚とする時が流れるかのようだ。
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー 青山骨董通り店
住所:〒107-0062 東京都港区南青山5丁目11-5 住友南青山1F
営業時間:11:00~20:00 (無休)
TEL:03-6712-5455