大丸松坂屋百貨店は11月13日、アパレル大手のワールドと組んで、実店舗とネットなどの販売チャネルをシームレスにつなぐ”オムニチャネル”の取り組みを始めた。
両社が構築した新サービスは「クリック&コレクト」と「エンドレスアイル」。前者は大丸と松坂屋の顧客向けにワールドブランドを扱う専用通販サイトを開設し、ネットで購入した商品を百貨店内の実店舗でも受け取れるサービス。後者は両百貨店に入るワールドのショップで目当ての商品がない場合、販売員が端末から在庫を確認し、ネット経由で消費者宅に商品を届けるサービス。
具体的には、「クリック&コレクト」は大丸・松坂屋のホームページ上に、「ワールドオンラインストア」の大丸・松坂屋専用ページに進む入口を設置することで、消費者は営業時間の制約を受けずに「アンタイトル」や「インディヴィ」などワールドが展開する23ブランドの買い物ができる(画像はイメージ)。
購入した商品は自宅か、大丸6店(心斎橋店、梅田店、東京店、京都店、神戸店、札幌店)と松坂屋3店(名古屋店、上野店、静岡店)でも受け取ることができ、対象ブランドであれば店頭で取り扱いのないブランドでも9店舗で受け取れる。
サービスを利用するには専用ページでの会員登録が必要。決済も同サイト内で手続きされるため、売り上げはワールド側に計上され、同社は大丸松坂屋に手数料を支払う仕組みと見られる。消費者宅に直接、商品を届ける場合もワールドが配送を担う。
大丸松坂屋はワールドのネット販売のノウハウやシステムを活用することで「24時間、ストレスなく買い物できる環境を整備できる」(広報部)とするほか、店頭に利用者が来店すれば、販売員の接客力を生かした買い回りも期待できると期待している。
ワールドにとっても、自社通販サイトでは実施していない店頭取り寄せのサービスを一定規模の店舗を対象にトライアルでき、また、販売機会が増えるメリットもある。
もう一方のサービス「エンドレスアイル」は、百貨店店頭で欲しい商品の在庫がない場合、販売員が売り場に設置したiPadを活用して当該商品の在庫を確認。在庫があれば通販サイトで購入でき、自宅への配送や、後日、売り場で商品を受け取ることも可能だ。
実施店舗は大丸3店(梅田店、神戸店、札幌店)と松坂屋1店(名古屋店)の合計4店舗で、「アンタイトル」や「インディヴィ」「タケオキクチ」など7ブランドに絞って行う。
大丸松坂屋では、まずは来年2月末まで両サービスを展開して利用状況を検証し、サービス領域をリビング商材、美術・宝飾品といったファッション以外の分野に広げることも検討するほか、現在はギフトや食品、コスメが主力の百貨店通販サイトの再構築に着手することも視野にある。
なお、オムニチャネル化の第2弾については、美術品の入札を店頭だけでなくネットでも行えるようにする考えで、12月11日から始まる松坂屋上野店の売りつくしセールからスタートする。
[元記事:オムニチャネルへの挑戦、大丸松坂屋百貨店、ワールドとのO2Oを実験]
「クリック&コレクト」は、ECサイトで注文した商品を店舗で受け取り可能に
「エンドレスアイル」は、売場で品切の商品をECサイトで在庫確認・購入が可能に
ファッション流通におけるオムニチャネル施策といえば、スタートトゥデイの新サービス「WEAR」とパルコの取り組みが挙げられますが、今回の大丸松坂屋とワールドによる協業では、ブランドが流通に”手数料”を支払うビジネスモデルで新たなスキームとなっており、業界内のオムニチャネル推進に拍車をかける可能性があります。そういった意味でも、その成果が大きく注目される取り組みとしてみることができます。
・大丸松坂屋「クリック&コレクト」 http://candc.dmdepart.jp/?waad=PzKkzgQ9