大手アパレルを傘下に持つTSIホールディングスは、2016年2月期を最終年度とする3カ年計画でネット販売事業を成長のエンジンとして強化する。
一環として今年3月、事業会社のサンエー・インターナショナルの直営通販サイトとして展開してきた「セレクソニック」をTSIのサイトと位置付け、大幅に刷新した。
ファッションECが成長期から成熟期に向かう中、「直営サイトは自社のブランドがもっとも魅力的に見せられるサイトでなくてはいけない」(柏木又浩営業本部Web戦略事業部長)とし、お得なショッピングサイトからの脱皮を図るとともに、ロイヤルカスタマーに向けた発信力を高める。
新生「セレクソニック」では従来よりもボリュームターゲットを5歳以上引き上げて35歳の女性に設定。「大人の女性が安心して買い物できるサイトを目指す」(柏木部長)という。
同社では客数よりも客単価を重視。高単価商品の投入や買い回りの促進などで客単価は従来の1万4000円台から2万2000円以上に引き上げたい考え。
[元記事:TSIホールディングス 直営ECのメディア化推進、9月以降にO2O展開も]
特に注目なのは、『VOGUE girl』クリエイティブ・ディレクター 軍地彩弓氏を編集長として起用したWEBマガジン『SStyle(エススタイル)』です。高感度なファッションを楽しむ大人の女性=35歳を読者イメージとし、毎週木曜日更新で4月18日のスタートから6月20日の期間で、NO.11までを現在公開。
内容としては、人気スタイリスト 白幡啓氏や近藤亜子氏、浜田英枝氏などを招いた「Fashion Story」、1アイテムの着こなしを提案する「1 for 5 style」、来日した「海外デザイナーインタビュー」や軍地氏による「おしゃれ相談室」、また、メイキングムービーやセレブスナップを掲載するなど、EC販売商品とリンクした自社メディア・コンテンツを充実させています。
“店頭とネットの連動強化”がキーワードとなっているファッションECですが、購入検討段階→購入意思決定までの間で「ユーザーが”欲しい”と思ったものをどの段階でも逃さない」という、売り逃し防止をいかに徹底できるかがキーファクター。そのためには、あらゆる場所に360°の網=仕掛けをはることで、ブランドや商品とのタッチポイントを増幅する必要があります。そういった面からも取引先でありつつ、利益率という意味では競合となりえる大手通販サイトとのコンテンツの差別化や在庫連動を図ることで、競合ではなく共存していく流れが加速化しています。また、ブランドWEBと自社ECを統合する企業も出てきており、イメージ発信しながらもより実売を意識した受け皿となるWEB環境整備に取り組んでいます。
さらには、今回の「セレクソニック」のように自社ブランドを集結したECのコンテンツ拡充とコミュニケーション強化によって、各ブランドが抱えるファンを回遊させることで自社サイト内での買いまわりを促進し、“客数よりも客単価”を重視した戦略を図るファッション企業も少なくありません。
このように、“リアル店舗のショールーム化による、自社ECへの誘導”と、“オンラインからリアル店舗に来店促進を図るO2O(Online to Offline)”施策の両軸を双方向で徹底的に駆使することで、売上の最大化を図ることがファッションECの重点課題となっています。
・SELECSONIC『SStyle(エススタイル)』http://www.selecsonic.com/magazine/sstyle