前号ではベイクルーズのEC拡大の要因として3つのキーワードを挙げたが、今回はその中の「データと在庫の連携」という点に着目し、同社の取り組みを見ていく。データと在庫の連携は2013年11月から始まった。
自社通販サイトである「スタイルクルーズ」と出店している仮想モールとの間で連携を進めており、今は「スタイルクルーズ」と、「マガシーク」「マルイウェブチャネル」「セレクトスクエア」「アイルミネ」の4つの仮想モールで共通のデータと在庫を使っている。ECで一番の売り上げを占める「ゾゾタウン」だけはデータも在庫も別。つまりEC在庫は2つ(自社とゾゾ)を抱えているという状況だ。
自社通販サイトと仮想モールとでデータを連携することのメリットは、例えば今まではモールに出店する場合に管理画面の運用方法を覚えたり、在庫を振り分けたり、売上動向を見ながら在庫を移動させるといった業務が発生していたが、そうした手間がなくなった。同社取締役ICT統括の村田昭彦氏は「連携するかしないかの選択だけをすれば同時にスパッとできる」と述べる。
連携により業務効率も上がっている。それまではそれぞれのモールの管理画面を開きコピーしてから別の管理画面にペーストしていたが、その作業がなくなった。また、画像のクオリティーもベイクルーズ側でコントロールすることにより向上した。
そうした連携の結果、今期初(14年9月~)から12月までで、EC全体の売上高は前年同期比40%増で推移しているが、データと在庫連携をしているサイト(ゾゾを除いた自社通販サイトと4つの仮想モール)は同67%増で伸長しているという。
在庫一元化によって機会損失が減ったことに加え、モールに各ブランドが出店しやすくなったため、以前よりも出店数を増やしていることが好調を後押ししている。
オムニ化推進へ全社で在庫連携
ベイクルーズの在庫連携の取り組みはECに限ったものではない。同社が思い描いているのは店舗とECを合わせた全社レベルの連携、つまり”オムニチャネル化”だ。
例えば自社通販サイト「スタイルクルーズ」では、その商品をどこの店舗で扱っているかがわかるようになっているが、店舗には商品があるにも関わらずEC在庫は完売になっていることがあり、同社が実施しているアンケートで毎回不満の声が挙がるという。そこで店舗にある場合はサイトを通じて取り寄せ購入ができるような仕組みを作る。同社ではそれだけでもかなりの売り上げ向上効果や顧客の不満解消につながるとみている。
今後は全社の在庫データを一元管理し、そのデータを活用してECに限らずどこからでも商品を引き当てることができるようにしていく。これについては「仕組みを構築しているところ」(村田氏)としており、この仕組みにより店舗の負担軽減と顧客の手間を除いていく。そのためには顧客データの統合なども必要になり、完全実施までには1年程度掛かるという。
同社がオムニ化を進めていく上でのキーワードは”スマホによる顧客接点の拡大”。「お客様とコミュニケーションできるデバイスはスマホが中心になる。ここで接触できなければ完全に負け組になる」(同)としている。自社ECを軸にしながらスマホ経由の顧客接点を拡大させることで、オムニ化を進めていく方針だ。
このようにオムニチャネルへの準備を進めているベイクルーズ。今期の売り上げ見込みはEC全体で前期比28%増の155億円、うち自社ECは同43%増の60億円となっている。第1四半期が終わった段階で想定通りに進んでいるとのことで、今期も拡大は続いていきそうだ。