本日はお盆真っ只中ということで、F.M.J. 夏休み特別編として少しだけファッション・マーケティングから離れて、”いま世界で最も話題のプロモーション”をご紹介します。
カンヌ国際映画祭は皆様もご存知かとは思いますが、実は広告業界にも通称「カンヌライオンズ(正式名称:カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル)」というものがあります。これは今年2013年に60周年を迎えた歴史ある世界最大級の広告アワードで、創設当時メディアとして映画が主流であったため、今もなお活用されるシネアド(劇場CM)の振興の場として同じカンヌで「カンヌ国際広告祭」として始まったものです。
毎年6月頃に世界各国からトップクリエイターをはじめとする広告関係者が約10,000人集まり、1週間かけて審査から表彰まで行われ、フィルム部門、プロモ部門、PR部門、サイバー部門、インテグレーテッド部門、アウトドア部門などその手法ごとに全17部門のグランプリ、ゴールド、シルバー、ブロンズ各賞が表彰されます。
前置きが長くなりましたが、”いま世界で最も話題のプロモーション”とご紹介するのは、その2013年「カンヌライオンズ」において、5部門でグランプリ、18のゴールド、3つのシルバー、2つのブロンズを受賞した、オーストラリアの鉄道会社「Metro Trains Melbourne(メトロ・トレインズ・メルボルン)」のキャンペーン「DUMB WAYS TO DIE(マヌケな死に方)」です。
これは、「メルボルン鉄道」における電車死亡事故が増加傾向にあることを背景に、その減少・防止を目的に2012年11月から実施された安全啓蒙キャンペーン。
キャンペーンのコアコンテンツとして、アニメーション動画「DUMB WAYS TO DIE (マヌケな死に方)」をYouTubeで配信。その内容は、かわいいキャラクターたちが歌に合わせ、「自分の髪に火をつける」「期限切れの薬を飲む」「宇宙でヘルメットを外す」「瞬間接着剤を飲む」など、さまざまな”マヌケなやりかた”で次々と死んでいく、ブラックジョークに富んだ表現。最終的には「駅のホームの端に立つ」「遮断機が下りてるのにくぐっていく」「ホームの線路を横切る」ということが”一番マヌけな死に方なんだ”という、最も伝えたいキーメッセージに繋げています。
この動画コンテンツはYouTube, Facebook, Twitter, Tumblr, Redditにて配信、またキャンペーンソングはSound Cloud, iTunesや地元ラジオ局などの様々なメディアで配信。また、絵本やスマホゲームの開発、駅構内では動画に登場するキャラクターが壁に描かれたエリアを設置、来訪者が撮影し、自身の電車事故に対する安全宣言とともにInstagramに投稿するキャンペーンも実施しました。
その結果として、YouTubeでは5,600万回以上再生, iTunesでは28の国でチャートイン、Facebookでは320万のシェア獲得、200以上のカバーバージョン、替え歌などが投稿されるなど、同社のメッセージを伝えることに成功。結果、鉄道内での死亡事故が21%減少したという、世界中で評価されているキャンペーンとなっています。
今年のカンヌでキャンペーンのキーワードとなったのが、「Social Good(ソーシャルグッド)」です。これは、企業の社会貢献活動、つまりは、「世のため人のため」というキャンペーンです。この「DUMB WAYS TO DIE」はその象徴的な事例として評価されたといいます。
くしくも本日は終戦記念日でありながら、現在もなお世界中で様々な争いや不安が少なくありませんが、ファッション業界においても、このような「ソーシャルグッド」なキャンペーンが日本発で生まれるようになれば、ひとつ違ったかたちで次世代に貢献できるのではないかと考えさせられる事例だと思います。そのためにも、F.M.J.としてもこのような優良なキャンペーンを今後も積極的にご紹介していければと考えています。
長くなりましたが、以下の動画を見て頂ければ、評価される理由がなんとなくでも感じて頂けると思います。
・「DUMB WAYS TO DIE」 http://dumbwaystodie.com/
・「DUMB WAYS TO DIE(日本語字幕ver.が選択で視聴できます)」
・「DUMB WAYS TO DIE キャンペーン紹介ムービー」