O2OサービスのSTYLERが公開した、「Fashion Tech Map」
Fashion Tech Lab.が先日公開した「FashionTechMap」。以前の記事ではカテゴリを軽く紹介しただけでしたが、今回からMAPに掲載したサービスをカテゴリ毎に、定期的にご紹介していきます。今月は「VIRTUAL STYLIST」をピックアップし、徹底的にこの分野について解説、分析していきます。
・「VIRTUAL STYLIST」はショップスタッフとユーザーのギャップを埋めるサービス
おしゃれはしたいけどスタイリングが分からない人のために、ショップ店員やオシャレな人のコーディネイトをメディア的に取り上げたり、プロのスタイリストからアドバイス、はたまた人工知能がレコメンドしてくれたりと、種々のアプローチでスタイリングを提案してくれる「VIRTUAL STYLIST 」サービス。
このカテゴリの目標は、毎日のスタイリングを様々な方法で提案することで、ショップ店員と一般顧客の間にあるファッション(アイテムやコーディネート)に対する情報の非対称性を解消すること。つまり、アイテムやコーディネートに関する情報/知識を豊富に持っているショップ店員と、それらの情報を得る機会が少ない一般顧客とのギャップを埋めるのに役立つのです。
ユーザーがパーソナライズした形で情報を得られる「VIRTUAL STYLIST」のサービスは、急成長を遂げておりECの発展との相乗効果でマネタイズ的にも今後期待される分野です。今回はまず代表的な3つのサービス、WEAR、iQON、Polyvoreを比較していきます!
1.WEAR:DL数600万超、WEAR経由ZOZO売上の月商は10億を突破!
WEARは2013年10月にZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイがローンチしたコーディネートアプリ。WEARの主な機能は以下の3つです。
・300万以上のコーディネートから、自分に合うものを検索できる「メディア機能」
洋服のカテゴリー/ブランド名/ショップ名/ランキングなど様々な軸で検索することができ、自分の合ったコーディネートだけでなく、トレンドアイテムの発見などにも役立ちます。またウェアリスタや、国内外のファッションスクールでWEAR活用コンテストを開催する等、一般人の中からもカリスマが生まれる様な仕組みづくりにも取り組んでいます。
・WEAR内のコーディネートに使用される服がオンライン購入できる「EC機能」
Eコマースサイトと違い、ユーザーはコーディネートを想定した上で購入することができます。またショップ側もユーザーによる所謂マネキン買いなど、コーディネート一式を買うような動きが期待できます。
・自分のコーディネートを自撮りして投稿、購入した服をオンライン上で管理し、コーディネートランキングを通じ他ユーザーとも交流できる「SNS機能」
意外にもコーディネートアプリの中で、自撮り写真を投稿するものは多くありません。WEARを運営するスタートトゥデイは「自分の写真を人に頼むのは恥ずかしい」というユーザーの声に応え、全身コーデ写真撮影に便利なハードウェア、リモートシャッターの「Pachil」(パチる)を販売しています。
また、ウェア上で購入した服はオンライン上で管理することができる、クローゼットアプリのような機能も備えています。また、SNSのように他のユーザーと交流できるというのも特徴です。
当初WEARにはリアルな店舗の洋服に取り付けられたバーコードをスキャンすると、同じ商品をZOZOTOWNで購入することが出来る「バーコードスキャン機能」がありましたが、実店舗の販売が減少するといった店舗側の不安もあり、2014年4月に廃止になりました。ただ、店頭在庫では欠品しているサイズや色の購入ができる、他店を回った後に購入する際に店舗の戻る必要がない等のユーザーメリットも多く、オンラインとオフラインを横断したこのような機能は、ショップ側のEC対応等やユーザーのオンライン購入への意識変化が進展するにつれ、復活、もしくは他の事業者から提供されることも十分に考えられます。
以上のようにWEARにはメディア的機能、EC的機能、SNS的機能が混在しており、ユーザー数が増えることでその価値は相乗的に増大することが期待されます。
2.iQON:DL200万越え、1日あたり2500件のコーディネートを掲載!
iQONは、2010年4月にサービスローンチされたコーディネートアプリで、WEARと同様に様々な軸でのコーディネート検索や、アプリ内での決済、他ユーザーとの交流ができます。iQONの特徴は、以下にあります。
・iQONと提携している60社以上のECサイトのファッションブランドから、自分の持っていないアイテムも含めてコーディネートに使用できる
iQONでは、ユーザーが自分の持っていないアイテムからもコーディネートを作成し、SNSとして他のユーザーが閲覧することができます。提携ブランド数は10,000件を超え、より多様でユーザーの理想的なコーディネートづくりを実現しています。他のユーザーはメディアとして他人のコーディネートを楽しむとともに、アイテムを購入することもできます。
・ViViやRay等人気女性雑誌の記事がアプリ内で閲覧できること
もちろん、他のユーザーのコーディネートを閲覧することは、メディアとしての見栄えがありますが、コーディネートだけではなく、ViViでRayといった人気雑誌の独自記事もアプリ上で楽しむことができます。洋服の情報だけではなくヘアスタイルやメイクなど、美容記事まで毎日5本程度掲載されるので、見応えがあります。
・ブランドとのコーディネートコラボのコンテストで勝つと商品がもらえること
iQONの仕組みはコーディネートの人気をユーザー間で集めることもできますので、月に1,2回コンテストを行い高額な限定商品をコーディネートを作成したユーザーにプレゼントしています。このようなゲーム要素をSNS機能に追加することにより、ユーザーのコーディネート投稿数を増やそうとしています。
誰でも気軽に自由に洋服のコーディネートを作成できるiQONは、SNSとコマースが結びついているサービスですが、ネットコミュニティでは投稿をしないユーザー(Read Only User)が相対的に多くなります。また、質の高いコーディネートを作成できるユーザーも限られていることから、人気雑誌とコラボすることによりメディア×コマースの色彩も強くなっています。アマチュアからプロまでさまざまな人のコーディネートを閲覧することにより、ユーザーはファッションアイテムの購買意欲が刺激されます。
3.Polyvore:このカテゴリの先駆者であるファッションアイテムを中心とするライフスタイルコーディネートアプリ、月間ユーザー数2000万人。
Polyvoreは2007年に創業し、本社を米カルフォルニア州マウンテンビューに置き、同名のファッションコーディネートアプリを運営しています(2015年7月米Yahooが推定200億円で買収)。
このカテゴリの先駆者であり、WEAR、iQONよりも数年早くメディア、EC、SNSの機能を持ったアプリを展開しています。さらに、Polyvoreには、先の2つのアプリにはない以下3つの特徴もあります。
・ユーザーが、洋服だけでなくコスメや家具も選び、ライフスタイルコーディネートを雑誌のように提案すること
Polyvoreは、iQONの元になったアメリカのサービスです。同様にユーザーはファッションのコーディネートを作成、閲覧、購入することができます。コーディネートには洋服だけではなくソファやカーペットといった家具までも選ぶことができ、ユーザー好みのライフスタイルコーディネ―トをすることができます。
・様々なジャンルのコーディネートやアイテムを選択していく内に、ユーザーに最適なアイテムが表示される機能が搭載されていること
アプリDL後、まず20種類のコーディネートから好みのコーディネートを3種類選ぶと、ユーザー好みのアイテムが表示されるようになります。以後もアイテムにLikeを押す度、ユーザー最適化がなされます。
・取扱商品の価格幅が、数千円のものから高級ブランドの数十万までと幅広いこと
商品価格帯を広くすることで、ファストファッションブランドと高級ブランドをミックスしたスタイルの提案が可能になります。月間2000万ユニークユーザーとも言われる幅広いユーザー層の獲得に寄与していると考えられます。
取り扱い海外ブランド数が多く商品値段も円表示されるPolyvoreは、海外ブランド好きの日本人におすすめしたいライフコーディネートアプリですが、実際に商品を購入する提携ECサイト上では日本語・日本円対応していない場合も多くあり、英語が苦手な日本人には利用のハードルが未だ高いといえるでしょう。
・VIRTUAL STYLISTまとめ
今回ご紹介したWEAR、iQON、Polyvoreにはいずれもコーディネートの作成・閲覧・購入の機能、SNS機能がありますが、WEARは等身大のコーディネートを見たい人、iQONはファッション雑誌のようなコーディネートやヘアメイクを見たい人、Polyvoreは海外らしいコーディネートを参考にしたい人と日本のユーザーも使い分けができます。各アプリはユーザーを獲得し購買意欲を促進するため、今後も取り扱いブランド数の増加など様々な機能を増やしていくと考えれますが、新機能を分析することでユーザーの動向の変化も知ることができるでしょう。
いかがでしたでしょうか?11月は引き続き「VIRTUALSTYLIST」サービスに関する記事をお届けします!今回はコーディネートを投稿、閲覧できるサービスが中心でしたが、次回はスタイリストと直接コミュニケーションできるサービスを中心に取り上げる予定です。
[元記事:Virtual Stylistの代表的サービス「WEAR」「iQON」「Polyvore」は何が違うのか?各サービスを比較してみました。]