「買いたい服がない」と日経ビジネスが特集したのは、昨年10月。混迷するファッション業界に対して、服が売れないのではなく、買いたい服がないのだという提言だった。はたして本当にそうなのだろうか──。
ファッション業界には、さまざまな立場のスペシャリスト=プロがいる。デザイナー、マーチャンダイザー、バイヤー、PR、編集者・ライター、スタイリスト、広告会社など。それぞれがそれぞれの立場、視点で、ファッションを売るために日々躍起になっている。本特集では、そのスペシャリストの言葉を通して、ファッションの未来を紐解いてみたい。
8月に始動したばかりの新セールスエージェンシー、エルディスト(ELDEST INC.)もそのひとつ。セレクトショップを中心としたバイヤーへの営業代行、いわゆるファッションのプロにファッションを売るプロだ。
エルディストは、東京を拠点に世界各国のウィメンズブランドを、日本のファッション市場に展開していくことを目的とした新会社。国内外を問わず、明確な強みと個性を持ったコレクションに共感を抱くブランドと共にタッグを組み、各ブランドごとにターゲットを絞ったマーケティングプランを考え、最適な販売戦略に基づくセールス活動を行うのが強みだ。
今回、エルディストの代表、宮腰研氏に話を訊いた。
ー 「ELDEST」の社名の由来は?
カードゲームのプレーヤーで最初にアクションを起こす人を指す意味で、ゲームの流れを作るような役割のある人物、という部分に準えて名付けました。
ー 今のタイミングで法人化したのには理由があるのですか?
フリーランスから始めて、今年で4年目なのですが、ここから更に会社を伸ばしていくには必要な流れだったからです。また、海外公共事業などのお仕事もいただくようになり、その際の信頼性の問題もあります。
ー ファッションだけでなく、物が売れない時代と言われますが、セールスの立場からはどう感じていますか?
量を求められる時代ではなくなってきていると感じていて、僕の会社では他と明確に差別化できる “個性” “稀少性” も大切にするよう心掛けています。
<エルディストが取り扱うブランド>
ー 「ELDIST」の強みは?
僕の会社では、ファッションの発展途上国やイメージの少ない国から見つけてきた、良い意味でイメージを裏切る目新しいブランド・商材も扱っています。もともとバイイングをしていた頃の感覚も生かして、市場に求められそうなものをピックアップして、どのように編集すれば最適な見せ方を出来るかということを考えてセールスをしています。
ー 先ほど少し出た海外公共事業の仕事とはどういったお仕事なんですか?
フィリピン、香港、タイなどの大使館・行政機関などが主導する、日本のマーケット進出のお手伝いをさせて頂いています。海外へ出向いてセミナー・個別面談を行ったり、日本でランウェイショー・展示会イベントを開催する際のセールスアテンドを主に行っています。例えば、タイでは今、国を挙げてクリエイティブな産業に投資する動きがあって、若手デザイナーによるファッションブランドがたくさん興っています。そういった若いブランドに対して、日本に受け入れられるブランドにするにはどうしたらいいのかを、一から説明してきました。
ー コンサルティングのようなお仕事もされるのですね。
そうですね。東南アジアの国々は、経済もファッションもこれから伸びていくところなので、とても大きな可能性を感じています。そういったところに求められれば、今後も日本進出に関するお手伝いをしていきたいですし、それを通じて、日本にももっと目新しい商材を紹介して行けたらと思います。
ーでは、この記事を読まれているバイヤーさん向けに情報があればお願いします。
今がちょうど2018年春夏の展示会シーズンで、8月30から9月1日まで雑貨中心に国内外9ブランドの合同形式の展示会を青山にて、9月5日から8日まで「ロキト(LOKITHO)」・「ラマルク(LAMARCK)」の展示会を代官山にて、9月12日から15日までフィリピン大使館主催の展示会を丸の内にて、9月21日から22日までフィンランド大使館の展示会主催を青山にて予定しています。
ー 最後に、今後の展望をお聞かせください
モノと情報が溢れかえる時代だからこそ、ファッションを好きになった原点にある高揚感やワクワク感を感じるモノを厳選し、拡めていきたいと思っています。
ファッションをセールスするエージェント。この時代には、なんとも頼もしい存在だが、本当の意味での選択眼を持っていないと務まらない職種といえる。それはきっと、最先端のコレクションから、途上国の新進気鋭のデザイナーまで、世界中のファッションに触れ、モノやヒトに出会い、よく知っていて、それを見分ける“目利き”であるということだ。そういった意味でクライアントにとっては、単なる営業代行ではなく、パートナーとして欠かせない重要な存在なのだろう。新たな展開も計画中だという、エルディストの今後に期待がかかる。
宮腰 研 ELDEST INC. CEO http://eldest-inc.com
1983年生まれ。大学卒業後、数社のアパレル企業でバイイング・セールス職などに携わり、2014年に独立。
フリーランスとして国内外レディースブランドのセールス業務、バイイング業務委託、セールスコンサルティングなどに従事。
2017年8月、株式会社エルディスト ( ELDEST INC. ) 設立。