みなさん初めまして。
今日からこちら F.M.Jでコラムを始めることになりましたVIRI-DARI desertaの渡邉俊介です。こちらのコラムでは、自分なりに感じてきた業界のことや、モノづくりの大事なことを、想いや活動や繋がりの中から様々なカタチで発信していければと思います。
さて、普段から僕はできるだけ意識をしてモノづくりをしています。使用する原材料、適正なコストなどなど、食品で無添加などを意識するように洋服や雑貨をつくるときには先々のことを考えて気を使い、意識して選択しております。
つい先日、とあるニュースを目にしました。
世界富豪トップ8人の資産、貧困層36億人分と同じ
ここから皆さんがまず気になるのは8人とは誰か?という部分だと思います。そう、8人の資産と世界中の貧困層36億人という部分よりも、その8人て誰なのかと・・・。
フォーブス誌発表の内容を引用させていただきます。
世界で最も富裕な8人と資産額(フォーブス誌)
- 位 ビル・ゲイツ氏(米国) マイクロソフト創業者 750億ドル(約8兆5000億円)
- 位 アマンシオ・オルテガ氏(スペイン) ZARA創業者 670億ドル
- 位 ウォーレン・バフェット氏(米国) バークシャー・ハザウェイの筆頭株主 608億ドル
- 位 カルロス・スリム氏(メキシコ) グルポ・カルソ創業者 500億ドル
- 位 ジェフ・ベゾス氏(米国) アマゾン創業者 452億ドル
- 位 マーク・ザッカ―バーグ氏 フェイスブック共同創業者 446億ドル
- 位 ラリー・エリソン氏 オラクル共同創業者 436億ドル
- 位 マイケル・ブルームバーグ氏 ブルームバーグ創業者 400億ドル
まあ、すごい数字ですよね。
そして、ここから“世界富豪トップ8人の資産が世界の貧困層36億人分と同じ”という内容がでてくるわけですが、僕がこの記事を読んで気になったのがアマンシオ・オルテガ氏の名前が載っていることでした。そう、ファッション業界では歴史もあり、いわゆるファストファッションで成功しているブランド“ZARA”の創業者です。
アパレル業界の創業者がフォーブスのベスト8に名を連ねるってとんでもなく凄いことだと思います。
もちろんこの内容を国際NGOオックスファムが発表し、BBCが記事にしたときには、沢山の賛否両論が巻き起こるわけです。
「そんな貧困層の人たちがいるのに不公平だ」
「お金持ちは悪い奴らばかりだ」
とか、
「みながそれぞれ苦労してきた経営者で凄い」
「みんなリスクをとってやってきたのだから莫大な資産をもってなにが悪いのか」
などなど、論争があるわけです。
お金持ちが善い、悪いだの貧困層がかわいそうだの哀れだのってことを僕は言うつもりもないし、言いたくありません。
ただ、アマンシオ・オルテガ氏がこれだけの資産を、洋服を作って販売する仕組みで財を築き上げることができた背景にはなにが行われていたのか?僕はそこが気になりました。他の富豪に関しては株やIT、ソフトウェア、鉄鉱石などで財を積み上げた形です。
洋服は、自然の力で出来上がった材料(コットンなどの天然繊維やウールなどの動物繊維)を利用し、人の力で縫製し、出来上がったものを販売し利益を得る仕組みなので、他の7名とは全く違う形かなと。
ラルフローレンでも無く、バーバリーでも無く、ファストファッションブランド ZARAの創業者の資産が670億ドル。
やっぱりとてつも無く凄い話しです。
皆さんは“ザ・トゥルー・コスト”というドキュメンタリー映画をご存知ですか??
ここではステラマッカートニーやパタゴニアの副社長であるリック・リッジウェイなどが、自分たちが関わるアパレル業界の問題点などを語っています。
例えば、ZARAで980円のT-シャツが売られているとします。そのモノのコストはいくらなのか?自動車や電子機器のように服はすべて機械では作ることはできません。ミシンをふんで縫い上げるものです。一枚の縫製コストはたぶん300円を切る値段なはずです。海外で作られた生地を裁断し、生地値と裁断賃と縫製賃を足していくらなのか?原価が300円以下であれば、たぶんモノ自体のコストは200円以下でしょう。200円の中に縫製賃が含めれています。
そのモノを縫っている人たちの給与や環境は??
安くて可愛いモノが溢れている時代です。
でも、それらがどこでどんな形で作られているかは皆さんほとんど興味を持たないと思います。
ZARAはFacebookやTwitter、株や通信会社、ソフトウェアの開発会社ではありません。
服作りは綿を栽培し、糸を作り、染め、生地を作り、裁断し、縫い、仕上げ、一枚一枚作り上げていくものです。
中学を卒業し、自分で縫製しながらZARAを立ち上げたアマンシオ・オルテガ氏。
僕は彼のような偉大な創業者が、未来あるファッション界を築いてくれたらどれだけの若い子達が輝けるのだろうかと想いました。
安いモノには必ずその背景に苦しんでいる人たちがいます。偽善的な話しではなく、適正な対価でのモノづくり以外には犠牲がともなっています。
そんな繊維業界の負の部分を少しでも変えていきたいなと想います。だってみんなスマホで課金はできるし、タバコも買えるし、パチンコをしたり、いまや余計なモノをインターネットでポチッと買い物したり・・・。そのお金は一ヶ月でどれだけ浪費しているのか??愚痴ばかりの飲みの割り勘代だってばかにならないでしょ。
まあ、洋服などに興味の無い人は“そんなこと言われてもねぇ”と、なるのかもしれませんが、980円のT-シャツが売れれば売れるほど、世界の貧困層の労働者は増えていきます。なぜならそのスキームで“利益を得た人達”はずっと安く縫えるところを世界中探し歩き、労働させていくでしょう。
1ヶ月10ドルという給与。
ファストファッションを否定する話しではありませんし、オルテガ氏を批判もしていません。
もっとしっかりとモノづくりに向き合い、適正で頑張っているブランドが世界や日本には沢山あります。そろそろ見た目だけではなく、中身も知ってその“価値”を知り、選択肢を増やしていきましょうと皆さんに声を大にして言いたいです。
一度、“ザ・トゥルー・コスト”を観てみてください。
洋服や繊維、ファッションに興味のある人、関係者は特に観ていただきたいです。ファッション業界で働きたい!働いているけど中身を知らない人達、少し時間を割いて中身を知り、そこからまた考えてみてもいいのでは??
そして僕が想うことは、670億ドルの中の数%でもあればこの業界を少しづつ変えられると思います。
今後のアマンシオ・オルテガ氏やZARAには期待したいですね。
About “JICK”
あなたの軸は、なに?
外見だけかっこつけてないかい?
知っているようで知らないこと沢山あるんじゃない?
そんなのでいいの??
そんなこんなを見直すオトナのインスピレーション連載。オーガニック、エシカル、クオリティ高いライフスタイル。そこに必要なのは、お金よりルックスより、“良いモノはイイ”を見抜いていく感性と、スッと筋の通った真っ直ぐな心の軸。
“進化する感性”を刺激しながら、しっかりとした“軸”をブラさずに。