1日の終わりの美味しい食事と美味しいお酒は、それだけで日々の疲れを癒してくれるが、時に料理に合わせてこだわりのワインを選んでみるのはいかがだろうか。東京・外苑前にひっそり佇むスタイリッシュな外観の「ナンバー501(no.501)」は、厳選された食材とともにワインを楽しめるバーも併設した、世界の自然派ワインを扱う専門店。今回はno.501のスタッフ田中美帆さんに、自然派ワインの魅力とおすすめのワインについて伺った。
Photo: J.L.F.S Text: Madoka Takano Edit: F.M.J.magazine
#01 no.501について
“人間のように個性的な自然派ワイン”
ー これだけの自然派ワイン(ヴァンナチュール)を扱うワインショップは珍しいかと思いますが、オープンのきっかけを教えてください。
ファッション系のイベント演出の仕事をしているオーナーが、仕事柄ワインを飲む機会が多くあって、そこで自然派ワインに出会い、さらにそこにどっぷり浸かってしまったことがきっかけです。自然派ワインは、ボトルごとに味わいが違うので、個性的で人間みたいで面白いと感じたそうです。エチケット(ラベル)も枠にとらわれないデザインのものばかりで楽しいですよ。
ー まずお店の内装がおしゃれですが、これもオーナーさんの仕事柄なのでしょうか。
こだわりのある方なので、内装もそうですが食器一つひとつオーナーが揃えています。実は壁の絵もオーナーが自ら描いたもので、ぶとうの葉っぱとぶどうの実を表現しています。
ちなみに絵は販売もしていて、お買い上げいただければ額の外側にはみ出した部分も描きに出向いて行くそうです(笑)。
ー no.501とは、珍しい名前ですが、こちらの由来は?
少し長くなりますが…、ワインだけでなく野菜にも使われている農法のひとつに「ビオディナミ」という農法があります。除草剤や殺虫剤などの農薬や化学肥料を使用しない土壌で栽培する有機栽培の一種なのですが、ビオディナミの特徴は、月の満ち欠けに従って農作業を進めたり、独自の調合剤を使うことがあります。調合剤には500番から508番があって、その中の501番をとって店の名前にしています。501番は、クリスタルの粉を牛の角に詰めてしばらく土に埋め、それを希釈して散布することで土に光を集めると言われています。
ー なるほど、スピリチュアルな雰囲気を感じますね。そこから名前を取るところにもオーナーさんの自然派ワインへのこだわりが伝わってくる気がします。
#02 自然派ワインについて
“話題のオレンジワインは和食にぴったり”
ー 店頭には壁の上まで並んでいますが、何種類くらいのワインを置いているのですか?
500種類くらいですね。国は、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、チェコ、スロバキア、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、そして日本などのワインを揃えています。それぞれのワインは個性がさまざまなので、お客様のお好みをお伺いして、提案させていただいています。
ー 例えば、和食に合うワインなどもありますか?
自然派ワインはぶどうについた酵母をそのまま取り入れていて作っているので日本酒に近い部分があるのですが、こちらのオレンジワイン(日本・山形)はいかがでしょうか。白ぶどうの甲州を使って、赤ワインのように皮や種も一緒に発酵させているので出汁のような風味があって、和食だけでなく中華にもぴったりです。
Amphora Koshu 2018
年代:2018
生産地:日本(山形県)
生産者:グレープリパブリック
価格:¥4,560(税込)
ー 今、流行りだというオレンジワインは気になっていました。皮や種を取り除く白ワインは自然の酸化防止剤であるタンニンを持たないため、赤ワインに比べると亜硫酸(酸化防止剤)が多めに必要です。ところがオレンジワインは赤ワインと同じようにタンニンがあるため、亜硫酸の添加を控えたワイン造りが可能になるそう。そこに自然派ワインの生産者が注目したことで広がったそうですね。
ー では、エスニックに合うワインもあるのでしょうか。
エスニックに合うといえば、”ライトな赤”が良いかと思います。パッケージが日本のもののように見えますが、フランス・ラングドック地方の黒ぶどうと白ぶどうをブレンドして作られたワインです。チャーミングな感じの甘さがあるので、辛味のあるエスニックにはちょうど良いワインになります。すいすい飲めてしまいますよ。
デフェルラント2 (Deferlante 2)
年代:2017,2018
生産地:フランス(ラングドック地方)
生産者:オリヴィエ・コエン
価格:¥3,880(税込)
#03 “ストレスレスにおすすめ”のワイン
ー それでは、ストレスレスをテーマに、おすすめのワインを紹介していただけますか。
ストレスレスと聞いて、まさにこれがいいのではないかなと思ったものがあります。「無理しないで」という名前のワインになります。オーストラリアを代表する自然派ワインの生産者「ヤウマ」が日本向けに作ったワインなのですが、土壌の成分やブレンドの比率など詳細を質問する日本の人たちに向けて、細かい事を気にせず気楽に飲んでもらいたいというメッセージがこめられています。
01.Murishinaide「無理しないで」
年代:2018
生産地:オーストラリア
生産者:ヤウマ
価格:¥4,360(税込)
2つめは、私個人的に好きなワインになりますが、ジェローム ランベールという作り手のワインです。2種類のぶどうをブレンドしたものになるのですが、カベルネブランの枯れたような香りをグロローがカバーしていて余韻が伸びやかです。おやすみ前にゆっくり飲みたいようなワインです。
02.ル・フィル・ルージュ
年代:2015
生産地:フランス(ロワール地方)
作り手:ジェローム ランベール
価格:¥5,090(税込)
3つめは、no.501オリジナルの「みどりちゃん」です。オーナーがたまたま出会った、地元広島の障害者施設で作られている甲斐ぶどうを使ったワインで、ロゼの微発泡になります。ワインは時期によって味わいが変わってくるのですが、紫だった色がピンクがかってきて今すごく美味しくなっています。また10月初旬にもスタッフ総出でぶどうの収穫に行ってきた所で、新しいワインも第1弾が年末には出来上がってきそうです。
03.みどりちゃん
年代:2018
生産地:日本(広島県)
生産者:no.501
価格:¥4,200(税込)
ー オリジナルワインも作っているとは、ワインへの愛を感じますね。
みどりちゃんには手紙が付いているのですが、こちらに感想などを書いていただき、店のポストに入れていただければぶどうの生産者に届ける仕組みになっています。東京と生産者を繋ぎたいというオーナーの気持ちが強いので、料理に使っている野菜はできるだけ地元広島の使っています。ちなみに、野菜はオーナーの実家で採れる野菜も使っていて、自分たちが食べる用に作っているものなので無農薬で、びっくりするほど大きく育った野菜が届くんですよ。
ー ワインだけでなくフードも気になってきました。角打ちといえどメニューを見るとしっかりとしたラインナップですよね。
バーというとレストラン帰りの2軒目や、食事前に立ち寄ってくださる方が多いと思うのですが、よく1軒目としても使えるね、と言っていただいています。
ー「醸造家はアーティストだ」と掲げているように、エチケット(ボトルのラベル)のデザインもオリジナリティ溢れるものばかり。カラフルでスタイリッシュな陳列棚に並ぶそれはまさにワインのギャラリーのようだった。ぜひあなたも美味しいフードとワインを味わい、作り手の想いを感じながら、ストレスレスなワイン探しに出かけてみては?
STORE INFORMATION.
no.501
住所:東京都渋谷区神宮前2-5-4 SEIZAN外苑1F
営業時間:13:00〜24:00 (11/6よりランチタイム営業を再開)
定休日:不定休
TEL:03-6721-0510