夏の猛暑でなんとなく疲れが溜まってきたこの頃。病院に行くほどではなくても慢性的に身体に不調を感じている方も、秋に向けて漢方で体調を整えてみるのはいかがだろうか。気になってはいるものの、使い方がいまいち分からなかったり、難易度が高いイメージやもある漢方。そんな漢方の世界に誰もが入りやすい間口を開いている薬日本堂「ニホンドウ漢方ミュージアム」にて、広報の鈴木咲絵さんと「ニホンドウ漢方ブティック」品川本店副店長の田中明日美さんに漢方の基本についてレクチャーしていただいた。
Photo: J.L.F.S Text: Madoka Takano Edit: F.M.J.magazine
#01 ニホンドウ漢方ギャラリーで知る漢方の基本
“漢方は日本独自のもの”
ー 1969年創業の老舗であり業界のリーディングカンパニー、薬日本堂が展開するニホンドウ漢方ミュージアムは、観て知ることができる「漢方ギャラリー」、実際相談できる「ニホンドウ漢方ブティック」、学ぶことができる「薬日本堂漢方スクール」、食べることができる「薬膳レストラン 10ZEN(ジュウゼン)」が併設された複合ショップ。まずはギャラリーにて漢方の基本の「き」についてご紹介いただきます。
まず、漢方とは「古代中国医学」をベースに日本の文化や風土の影響を受けて発展した日本独自の医学体系です。より健康に生活するための智慧で、漢方薬だけでなく、薬膳や鍼灸、ツボ、呼吸法など日々の養生も含みます。「病気になる前に対策すること」が漢方の基本です。
“漢方の考え方とは”
ー 漢方とは、漢方薬のことかと思っていましたが、健康になるための方法全般の意味もあったのですね。ではそのベースとなる考え方とは?
漢方のベースにあるのは、人も自然の一部であり、自然界のルールにのっとって人の体もできている、という考え方です。こちらのギャラリーでは、「陰陽論」、「五行説」、「気血水」など基本的な漢方における理論の解説を図解しているので、ご覧いただくとより分かりやすいかと思います。
また、ギャラリーでは、長い年月をかけて食べ物から分類された薬の成り立ちや、漢方薬の原料である生薬一つひとつもご紹介しています。植物だけではなく、動物や鉱物も生薬として使われていて、蝉の抜け殻をかゆみ止めとして利用する、など新たな発見もあるかもしれません。
ー 初心者でもイメージしやすそうな漢方の考え方をひとつ教えてください。
基本的な考え方に「気血水」があります。人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成されていると考えられていて、「気」とはエネルギーや原動力のこと、「血」は血液、「水」は血液以外の水分のこと指します。この3つはそれぞれ影響しあっていて、それぞれがバランス良く充実し、巡っていることで臓器や組織が正常に動くと考えられています。
たとえば「気」が減少するとだるい、疲れやすいなどの症状が出たり、「血」のめぐりが悪くなると痛みが出たり、「水」が滞るとむくみが起こります。これらを調節し、いい状態へ導くのが漢方の役割です。
薬日本堂が監修する漢方に関する書籍。日本コカ・コーラ社「からだ巡茶」の開発協力などでも知られる
“食べ物から取り入れる漢方”
ー バランスが重要ということですね。それでは、はじめての漢方はどう始めたらよいのでしょうか。
漢方ギャラリーでは、「春夏秋冬」それぞれの季節ごとの過ごし方やおすすめの食べ物などもご紹介しています。例えば夏には暑さで消耗し、汗で潤いが出てしまうので、秋へむけて体調を整えるためにお米や芋類で元気を補い、白ごま、白キクラゲ、豆腐などの白い食べ物で体を潤すといいなど、まずは食べ物やお茶などから取り入れてみるのはいかがでしょうか。
今の体は3〜4ヶ月前に食べたものやその時の過ごし方が表れています。さらに爪や髪の毛などの末端へ行き届くには6ヶ月かかるので、次の季節のために今から生活を整えておくことが重要になってくるんですね。
#02 漢方相談体験とおすすめの養生アイテム
ー では基本が分かったところで、実際に相談できる「漢方ブティック」で、今回は「夏疲れ」をテーマに、自分の体質にあった漢方薬の選び方やポイントを相談させていただきましょう。
それではまず、お悩みの症状はどういったものになりますか?カウンセリングでは、「気血水」のバランスの乱れや、体質を見てお茶や商品をお選びしたり、生活アドバイスを行います。
今回の漢方相談にご対応いただいた「ニホンドウ漢方ブティック」品川本店副店長の田中明日美さん
ー 季節の変わり目ということで、体の疲れとストレス、冷房による冷え、また慢性的に続く頭痛があります。
夏は暑さから体力を消耗することに加え、クーラーによる冷えや、冷たいものを食べたり飲んだりすることで胃腸が弱り、エネルギーを充分に取り入れることができず、疲れやすくなることがあります。
さらに、ストレスがかかると体がぎゅっと構えるので血管が細く縮まって、血の流れが悪くなりやすいです。流れが滞り、圧迫されると痛みの症状があらわれます。ストレスと一括りにしてしまいがちなのですが、ストレスによる症状がどういうものなのか、またその方の体質によってもお選びする漢方薬が変わってきます。では、血流計で血液の流れを測ってみましょう。
ー 気軽に測れるのですね。
この測定器では、血の量や血がうまく循環しているかどうかなどが分かります。こちらをもとに、さらに細かくカウンセリングしていきます。今までに患った病気や食べ物でのアレルギー、お通じのペース、お小水は1日に何回くらいか、寝つきが良いかどうか、睡眠時間などです。
ー 体の内側をさらけ出すような感覚でなんだか恥ずかしい気さえしますが、選んでいただく漢方薬が楽しみです。
漢方薬を飲んでいただくことは症状の改善につながりますが、より効果的な改善方法を期待するのであれば、体そのものを整えることが重要になります。バランスよく巡る体をつくるために、心・食・動(運動)・休・環(環境)の5つを整えていきましょう。
ー いよいよカウンセリングを元に選んでいただいた漢方薬が登場です。こちらの飲み方は?
煎じ薬というタイプで、自然の生薬を刻んだものが入っています。ティーバックのようになっていて、これを30~40分間ぐつぐつ煮出していただき、1日2〜3回かに分けて飲みます。漢方薬の種類には、他にエキス剤、錠剤などがあり、ライフスタイルに合わせてお好みで選んでいただけますが、今回はおすすめの煎じ薬をお選びしました。煎じ薬の良いところは、吸収がいいところです。
ー では最後に、気軽に取り入れられるおすすめの養生品をご紹介いただきます。
「活元茶(かつげんちゃ)」
紅茶をベースに元気素材のナツメや枸杞(くこ)、高麗人参がブレンドされています。マグカップに一包入れて頂くタイプなので簡単に取り入れられます。
価格:12包入 ¥800(税別)
「源生寿(げんせいじゅ)」
きのこの一種である霊芝(れいし)は漢方では古くから使われてきたものなのですが、その霊芝を人参エキスなどとブレンドした健康飲料になります。疲れが気になる時におすすめのドリンクです。朝5ml,夜5mlを2倍の水で薄めて飲んでいただきます。
価格:300ml ¥25,000(税別) 100ml ¥9,000(税別)
ー エコやオーガニックの流れとともに今注目されている漢方の世界。取材当日もスクールに来場する方々で館内は賑わい、薬膳レストラン10ZENには開店直後から列ができ、漢方の注目度の高さを改めて感じました。自然の生薬を使った病気にならないための医学は、知っているだけでも日々の生活がストレスレスなものになるはず。是非取り入れてみたいものです。
STORE INFORMATION.
ニホンドウ漢方ミュージアム
住所:東京都港区高輪3-25-29 前川ビル1F
営業時間:ニホンドウ漢方ブティック 11:00〜20:00(他施設により異なる)
定休日:なし
TEL:03-5420-4193