「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(Officine Universelle Buly)」は4月1日、東京・麻布台ヒルズの約6,000平方メートルの緑地が広がる中央広場に独創的なフォルムの新しいブティックをオープンした。
©KOZO TAKAYAMA
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーは、香水と基礎化粧品を取り揃えた、1803年パリ創業の総合美容専門店だ。独自に開発した化粧品や、世界中から選りすぐった原料と美容道具を提供している。
麻布台ヒルズの旗艦店は、ガラスとメタリックなアーチからなるキューブ状の建物で、かつてパリ中心部にあった中央市場レ・アールの特徴を模している。深みのある色合いの外観が周囲の緑地や虹色に輝くビル群と美しいコントラストを表現した。
内装はフランスの建築文化の魅力を支える塗装職人やブルゴーニュの家具職人、ガラス職人、陶芸家、大理石職人を起用し、伝統的な匠の技を結集させて仕上げている。彫刻を施したアーチや、幾重にも連なる陳列棚、昔ながらのヨーロッパの薬局を彷彿とさせる木製の柱、黒檀色のカボションをあしらったトラバーチン床や木彫り細工が、華やかなフランスらしさをより一層際立たせている。
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什器には伝統的な建具とシェラックを用いており、そのフォルムを見事に映し出しながらも、天井にはモダンなヘアライン仕上げスチールを用いてコントラストの美を演出。フランスでは幸運のモチーフとして親しまれている馬蹄形の中央カウンターには、古代の大理石を思わせる重厚なバルベンソン大理石を使用。
ガラスのショーケースには世界各地から集められた多様な美容道具が並び、対面式の専用カウンターには、オー・トリプルの香りを自由に試すことができる。
ブティックのデザインを手がけたアーティスティックディレクターのラムダンは、エンパイアグリーンからシェンナブラウンへとグラデーションを描く木製キャビネットの色で、時間に対するイメージの歪みを表現した。ラムダンがイメージしたのは、フランスの哲学者ドゥルーズによる一次元から多次元への移行という概念だ。
物事の見え方と建築形態の捉え方は、しばしば二重以上の関係をはらんでいる。色彩論などを研究するフランスの歴史家パストゥローによると、中世には薬学や魔術と関連づけられ、のちに幸運の象徴となったグリーンは対極性を含む色だ。また、ブラウンは、エスプリと眼差しを惑わせるとして、鮮やかな色を避けた19世紀の産業革命時代へのオマージュである。